本日は、飲み会です。
ので、酔っぱらい話をひとつ、


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可愛くて憎い、俺の想い人。
焦がれて焦がれて………でも、なかなか俺に堕ちてくれない彼女。


「二十歳になったからにはお酒もたしなめる様な大人の女を目指したいんです!」
と、そう宣言されたからには彼女の一番近い先輩の位置を必死でキープしている身としては、はじめてのお酒の相手をするために、うきうきと飲みやすそうな口あたりと度数の軽いカクテルのレシピを調べ用意して部屋に招待をした。
最上さんのはじめての相手を他に譲る気なんてさらさらないし、ほろ酔いのかわいい姿を見てみたかった。
あわよくばアルコールで大胆になった最上さんと甘いひとときを………なんて下心も、もちろんありで。


そして、俺は頭を抱えてる。
こんなに、こんなにも可愛くなるなんて聞いてない!!


「美味しいです!」
と、最上さんが嬉しそうに笑う。
あぁ、ほんとかわいいなぁ。
潤んだ瞳、薔薇色に染まる頬、いつもより舌足らずな声、くにゃりと力の入らない様子の柔らかな身体。


「おいひーれす!おかわりくらさい!」
と、ご機嫌にゆらゆらと揺れているようすがかわいくて、ニヤニヤと口元を緩めながらついついと望むままに差し出したグラス。

そろそろ止めないとあぶないかもしれない。と、やっと気付いたときにはもう、だいぶ酔いがまわってしまったようだった。

「おかわりくりゃさい!」
と、赤い顔でねだる。
「もう今日はだめだよ。若葉マークさんがそんなに飛ばしたらあぶないだろ?酔っぱらいの最上さんにはこっち。」
ミネラルウォーターのビンをおしつけるように渡す。
「むぅ!酔ってないでしゅよ!!まだ呑めますぅー!」
いやいやと頭を振る。さらさらと揺れる明るい茶色の髪から耳朶が除く。ピンクに染まったそれは、小さくて美味しそうで、食べたいなとか、舐めたら逃げらるかな?とか不埒なことを考えながら
「酔っぱらいはみんなそう言うの。さ、水飲んで。飲んだらベッドまで運んであげるからね?お嬢さん。」
と、囁く。
「やぁ!!寝ちゃうとせっかくの今日が終わっちゃうから、やーれす!」
などと、だだを捏ねる。
「せっかくなの?」
「はい!せっかくれすよ!!敦賀しゃんとふたりで呑めるのなんて、もうないかもしれないじゃないれすから!」
「なんで?最上さんが俺と一緒に呑みたいって言ってくれたら、いつでも付き合うよ?」
と、小首をかしげて顔をのぞきこむ。このしぐさをすると最上さんが嬉しそうな顔をしてくれることは知っているから。だけど
「うひょだもん…………。だって………」
ぎゅーっと眉間を寄せて否定する。


なんでこの娘は信じてくれないかな?きみが望むならなんだって叶えてあげたいのに。
物だろうが言葉だろうが行動だろうが気持ちだろうが、なんだって。
君から離れる以外ならね。


「なんで嘘?だってってなんで?」
せめるように問い詰めながら彼女との距離を詰める。とたんに俺の視線から逃れるように顔を伏せる。
「だって、つるがさん殺人的しゅけじゅーるだし」
「うん。仕事があったりするからね。今夜とか今すぐってお願いは、なかなか叶えてあげられないかもしれないけど、社さん脅したって社長に頭下げてだって、最上さんが俺と居たいって言ってくれたら叶えるよ?」
「………………またそんにゃこという。」
不満そうに、不思議な事をつぶやく。
「そんなこと?」
「わたしじゃないおんにゃのひとにもいうくせに。」
絞り出すような声。
「言わないよ、最上さん以外のひとになんて。」
信用がないのかな?君以外の女の子なんて目も触れずに君だけを想って来たのにね。

なのに、
「やめて…………やめてくらさい。」
深く深く俯いたまま、ぐずぐずと鼻をならす。
泣いてる?
「なにをやめてほしいの?」
彼女のほほを両手で挟み込んで、なかば無理やりに上向ける。
瞳にいっぱいの涙を浮かべて眉を下げている。
「わたし………わたし、もぅ馬鹿なおんなにもどりたくないんれす………」
ぐずぐずと鼻をならしながら小さい声を漏らす。
「どういう意味?」
「勘違い、しちゃうから…………期待して、もしかしたらって思っちゃうから、だから………」
「勘違いじゃないから、期待して?」
むしろ、俺の方が期待しそう。少しは男として意識してもらえてるのかな?
「………うひょつき!いじわりゅ!えせしんし!あしょびにん!!そんな敦賀さんなんか、こうです!!」
「っ!!」
最上さんがきっと睨め付けるように俺を見た次の瞬間、ぐっと胸ぐらを掴まれ引き寄せよられた。
一瞬、唇がぶつかる。
「えへへー。思わせぶりなことばっかり言ってらっしゃりゅから、わたしみたいな色気のないはんいがい女にうばわれりゅんですよ?」
そう言って最上さんが、ぼすんと胸に倒れてくる。


唐突な焦がれて焦がれた想い人からの強引なくちづけ。顔が耳が首が身体が熱い。
きっと今、俺の顔は真っ赤なんだろう。
衝撃に固まっていた身体が動き出す。今し方、与えられた彼女の唇の甘さと柔らかさをもっと堪能したくて、胸にうずまった彼女の顎を掬い上げると……………





「…………このタイミングで寝る!?」
ぐっすりと夢の中へと旅立ってしまった最上さん。酔って意識のない女性に無体など出来るはずもなく。




今、すっごい口の中いっぱいにご馳走を詰め込まれておあずけされた犬の気分なんだけど………本当にどうしてくれようか?この娘は。
「ねぇ、最上さん。とりあえず、起きたら……………覚悟してね?」
眠る最上さんに呟いて、逃げられないように雁字搦めに絡みついて眠ってしまおう。
きっと、彼女の悲鳴で目覚めさせてくれるはずだから。




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