新しいクスリや治療法をネットなどでみると期待するものの、使えるようになるまで時間がかかりすぎるのだ。 せめて治験で使えるようにならないと…
これは2017年1月10日のメルク発表。 日本語訳をどこかで出してくれるのを待ってたけど、どこにも出ないのでここでメモっておく。 「申請」くらいじゃ、ニュースにならないのかな? オレは期待してるのだが…
FDAがメルクの申請を受け付けた、というメルクの発表はここ。
簡単に意訳すると
- FDAはメルクが申請したキイトルーダ+ペメトレキセド(アリムタ)+カルボプラチンの初回治療の申請を受け付けた。
- 対象となる患者は転移性あるいは進行性の非扁平非小細胞肺癌でPD-L1の発現は問わない。ただしEGFRまたはALK遺伝子変異を有する患者は対象外。
- FDAは優先的に審査し、2017年5月10日をめどに結論をだす。
- 審査の対象となるレジメンは
<200mgのキイトルーダ(点滴)を3週ごと>
+
<ペメトレキセド 500mg/m2を3週ごと>
+
<カルボプラチン 5mg/mL/minを3週ごとに4サイクル>
根拠となる治験はKeynote-021 コホートG(G群)
ってことだ。
さて、ここまでは英語の訳なので、大方あってると思う。 以下はオレの理解なので間違ってる可能性もあるという前置きで…
この治験はKeynote-021 Part 2というもんで、第1/2相の結果が2016年のESMOで発表されたものだ。
で、ESMOでどんな結果が披露されたかというと、
(ソースはこれ。)
- キイトルーダ+アリムタ+カルボをアリムタ+カルボのみと比較したもの。
- 初回治療の123名をランダムに割り付けた
- 治験ではキイトルーダは24カ月の投与とあり、アリムタは維持療法として継続。
- 主要評価項目は奏効率(ORR)で、キイトルーダ+プラチナ製剤群で55%、プラチナ製剤+のみで29%
- 無増悪生存期間はキイトルーダ+プラチナ製剤群で13カ月、プラチナ製剤+のみで8.9カ月
- 各患者のPD-L1発現率は調査しており、PD-L1 1%以下の患者の奏効率はおなじく高発現の患者と比較して同様の結果となった。一方、PD-L1の高発現患者はより奏効率が高い傾向にある。 ただし、サンプル数が少ないので結論とは言えない。
- もっとも多く出た有害事象は、疲労感がキイトルーダ+プラチナ製剤群で59%、プラチナ製剤+のみで15%、脱毛はキイトルーダ+プラチナ製剤群で14%、プラチナ製剤+のみで2%
- グレード3/4の有害事象はキイトルーダ群で多く39% (プラチナ製剤+で26%)
- キイトルーダ群で見られる免疫関連の有害事象は甲状腺機能低下(15%)、 甲状腺機能亢進症(8%)、肺臓炎(5%)
第3相の結果をまたずに迅速承認を申請し、FDAが受領した、ということでメルクの自信(ひょっとしてなんらかのビジネス上の戦略)を感じる。
初回治療でPD-L1の発現を調べずに使えるということだが、それにしても、生存率の改善がどの程度なのか気になるところだ。 有害事象はあきらかにキイトルーダ群で高いわけで…
まぁ、あまり期待しすぎないようにしつつ、生暖かい目で見守るのだ。
<追加>
ネットで探したKeynote-021と思われるデータのまとめ。