中朝の脅威重視=高圧姿勢潜め、同盟強化を優先-米国防長官
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2011011300954

 ゲーツ米国防長官が13日の北沢俊美防衛相との会談で、こう着状態にある米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題と、新たな日米の共通戦略目標の策定とは「別問題」としたことで、北朝鮮や中国の軍拡など直近の脅威やアジアの安全保障環境の変化への対処を優先させる米側の姿勢が鮮明になった。
 「北朝鮮の核兵器と好戦的な行動」「中国の軍事力増強」。ゲーツ長官は13日の記者会見で、会談で取り上げた重点課題を列挙した。
 ゲーツ長官は来日前に、「北朝鮮による核兵器と大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発は、米国の直接の脅威になりつつある」と指摘し、北朝鮮が5年以内にICBMを開発する恐れがあると懸念を示していた。一方、中国は海軍増強だけでなく、アジアの制空権獲得を狙うステルス戦闘機の開発を進めているほか、米本土の大半を射程に入れたICBMを保有。米軍の軍事的優位性を揺るがしかねない存在になりつつある。
 米側は、日米共同開発中の海上発射方式の迎撃ミサイル「SM3ブロック2A」について、北朝鮮やイランだけでなく、中国の弾道ミサイル迎撃も視野に入れた運用を目指している。
 ゲーツ長官は前回2009年秋の来日では、当時の鳩山政権に普天間移設を日米合意通り履行するよう強く要求。日本側との会食を断るなど高圧的姿勢で臨み、日米関係悪化の象徴になった。
 しかし、今回の訪問では普天間問題を実質的に先送りすることを提示。北沢防衛相との約50分間の会談後、昼食を約1時間共にし、じっくり同盟深化の道筋を協議した。
 普天間問題をめぐり、オバマ政権が態度を軟化させたことの表れだが、それだけ北東アジア情勢が緊迫化している証左でもある。(時事)(2011/01/13-21:36)

 うーん、なんか訪中直後は妙に楽観的(Gates optimistic military ties with China headed in right direction)だったゲーツ氏ですけど、なんかトーンが思いっきり変わってきてますね。うーん、中国にいるうちは刺激しまいと無難に語っていたけど、中国から出て本音を出すようになったってところでしょうか。んー、違うか。
 どうも「北朝鮮による核兵器と大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発は、米国の直接の脅威になりつつある」というのを見るに、自身の軍縮計画の正当性をプロモートするため、5年以内に北が核装備のICBMを完成させるとか、素人目には妄想としか思えないような脅威を声高に叫んでいるような気がしてなりません。
 だいたい、んなもんが完成した!とか発表しても、実際に使う気になる前にB-2爆撃機あたりでサイロと制御室破壊して終わりのような気も。そうしたとしても困った事に、中露も表向き不快感を示すだけで、後は引かないんじゃないかとか思ってみたり…まあ、これはあたいの妄想ですけどね。現時点で北朝鮮のICBMとか言われても、さっぱり危機感覚えないわけでw

 しかし、殲20の方は結構困ったもんだな、なんて思ってたり。こーいう記事もあるにはあるんですが

■中国ステルス戦闘機「殲20」…超音速飛行は不可能=軍事専門家
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110114-00000080-scn-cn
 ピンコフ氏は「殲20はライバルであるF-22やT-50のレベルにはまだ達していない」との見方を示し、中国の戦闘機の欠点はエンジン動力の不足だと指摘した。さらに、「超音速飛行は不可能で、戦闘機のステルス性を確保するレーダシステムやステルス技術は完璧ではない」と主張した。ピンコフ氏は一方で、殲20の構造や機動性の良さは認めた。

 ピンコフ氏はJ20の原型機を「4+」戦闘機に等級分けし、エンジンや搭載装備を改良すればさらに完璧に近づくとし、殲20は価格的優位性によって国際市場でロシア製戦闘機のライバルとなると語った。


 なんでも、搭載予定エンジンが未だ完成しておらず、お披露目された試作機には旧型のエンジンを積まれてたらしいです。JSF氏の話によれば予定のエンジンであるWS15が目標通りの推力を達成できたなら、F-35程度の速度は出るんじゃないかという、F-X選定が迷走してる頭の痛い状況のようですね。
 カナードとかついてて、素人目にもステルス性は怪しいですけど、それ以外の素性は悪くなさそうですし、なによりまだ発展途上の機体ですし、現状の殲20見ただけで笑ってられるような状況ではない気がしますね。

 さて、一方で殲20とゲーツ氏訪中にまつわるエピソードですが、これも気になりますね。

■米国防長官「在日米軍は不可欠」 中国の文民統制に懸念
http://www.afpbb.com/article/politics/2782346/6663982?utm_source=afpbb&utm_medium=topics&utm_campaign=txt_topics
 ゲーツ長官は11日、訪中し胡錦濤(Hu Jintao)国家主席らと会談したが、中国軍は同日、開発中の同国初のステルス戦闘機「殲20(J20)」の初試験飛行を行った。しかし、会談時に胡主席ら文民指導部は「試験飛行について知らされていなかったことは、かなりはっきりしている」という。

 同長官は、胡主席が「(軍を)統制している」ものの、「近年、軍部と文民指導部との間に意思疎通の欠如とも言うべき兆候が見られることがある」との述べた。今回の試験飛行に加え、2009年の米海軍調査船への妨害や07年の人工衛星破壊実験についても、文民指導部が当初知らなかった可能性があるとしている。


 うーん、前もって報道陣まで集めて行われてた試験飛行を、胡錦涛主席が知らなかったってのはちょっと眉唾ですけど…そういう気配を中国政府が漂わせなきゃいけない理由も、今一つよく解らないんですよね。だから案外そんな可能性もあるのかな等とも思います。
 次期主席候補の習近平氏がこの試験飛行の一切をプロデュースしたなんて話(「殲20ステルス武力示威ドラマの総監督は習近平」)もありますし、中共内の権力闘争は深刻なレベルになってる可能性もあります。
 南沙や尖閣での中国海軍の示威行為なんかも、軍が党内での発言力を増すためにやってる可能性が高い気もしますし…
 そう考えると、将来の発展性はともかく、現状では張り子の虎と言ってもいい殲20を強引に公開したのは、米中軍事交流に反対し合衆国との対立を望む(そして、それにより党内での発言力と予算を確保しようとしてる)勢力による示威行動なのかもしれません。ゲーツが北のICBMの脅威を喧伝して、自身の軍縮計画の正当性を主張してるように。
 とはいえ、文民統制の縛りがある民主主義国家であれば、議会の承認無しにはそーそー無理押しは出来ませんけど、それが機能してるとは思えない中国の場合ですと、そのとばっちりは周辺国に及ぶわけで困った物です。
 せめて、内輪もめは国内で留めておいて欲しいものですけど、中々そう上手く行かないのも現実。

 ってまさか、人民解放軍の統制が上手く行かないから、ゲーツに泣きついたなんて事はないですよねぇ。それで会談直後、妙にゲーツが楽観的だったなんてことは…いや、まさかなぁw

 まあなんにせよ、党内の派閥闘争で、無謀な軍事的冒険に走りかねない国である事は確か。政府は甘い考えを捨てて、いつでも相手の豹変に対応できるよう備えをしていてほしいものです…って、こっちも党内闘争真っ盛りだったorz


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