隣に…… | 晴侍と雨女…時々猫

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飛鳥の雑談、裏話ブログです♪よろしくお願いします(^^♪

【運命】
そんな言葉。
信じていないわけじゃなかったけど、生きているその時間にあるとは思っていなかった。
人生全てが終わった時、この世界から私の存在が消えたその原因、理由、結果。
それこそが私の【運命】という言葉だと、その言葉を使う瞬間だとおもっていた。

気がつけば彼は隣に居た。

ずっとそこに居た様な気がする程に彼の存在が普通になっている。
共に生活して共に毎日を過ごしている日々。

出会ったのは5年前。

新しく買った自分だけのノートパソコン。
インターネットのケーブルを引くのが面倒で、お金も無かったからモバイルのネット接続を契約した。
一番安いコース。

仕事でネットを使っていた。
家に帰ってまでネットをする気にもならないだろうという理由だけでそのコース。

折角買ったノートパソコンもそんなに出番の無い日が続いた……ある日。
携帯電話を家に忘れて出勤した。
帰宅した時、携帯電話のランプが電気の付いていない部屋に点灯していた。

「……」

私はかなり疲れていた……色々ありすぎて。
携帯電話を見るのも面倒だったけど、急ぎの用事だったらいけないと開く。

電話の着信じゃない。
メールが1件。

「ごめん、君が悪いわけじゃない。でもごめん。別れよう」

分っていた。
メールの送信先を見たときに。
【無題】その件名を見たときに。
どんな内容か……分かっていた。

「そうね、私は悪く無い……」

1人出かけた雑貨屋で、彼を見かけた。
私以外の女と楽しそうに会話している彼を見かけた。

私とはまったく別のタイプ。
そう、可愛いと言う言葉そのものの彼女。

彼は私の存在に気付いたけれど、私はスッと視線をそらした。
そう、私にだってプライドはある。

ゆっくりとそして微笑みかけながら隣を通り過ぎた。

「知り合い?」
「うん、会社のね」
「ふ~ん。暗そうな人」
「あぁ」

そう?私はそんなに暗かったかしら?
フフッと耳に聞こえた会話に首をかしげて微笑んだつもりだったけど、頬になんだか熱い物が流れていくのを感じてた。

【男運】そんなの無いって自分で知っていたわ。
でも、ここまで無いなんてね。

メールで最後のご挨拶?
何て意気地なしの男……どうせなら堂々と会って言いなさいよ。
きっちり罵ってやるから……

そんな事を思いながら携帯電話をベッドに放り出した。
返信する気にもならなかった。

そうして私はめでたくフリーになった。

仕事が、朝から夜への勤務へと変わった。
理由は簡単。既婚者では無いから……既婚者は午後からはとても忙しくなるらしい。
結婚なんてしてないから良く分らないけど、自分勝手な言い分ね……そう思った。

13時出勤(実質は12時出勤)そして23時帰宅。
不満は沢山出た。私だけがその勤務。8時出勤の人は仕事が無いと15時には帰宅する……意味が分らなかった。
でも、そんな不満をぶちまけるだけの元気も無く、家に帰れば母親が見合いを言う。

結婚適齢期……

耳が痛くなるほど聞かされたこの言葉。溜息だ。

母親の攻撃をソコソコに回避して、部屋に入って、数時間、ベッドに寝転びながらテレビをつけてチラッとネットを接続する日が続いた。

別に私だって結婚したくないわけじゃない。

そんな日が続いて、私はいつも通りネットを徘徊してとある人に出会った。
他愛ない話から始まり……そして、いつの間にか自分のこともその人に話していた。
名前も知らない、年齢も知らない、人物も家族構成も……ましてや顔すら知らない。
でも、なんだか変な感じだった。
昔から知っているような……

いつの間にか、お互いにネットから飛び出して携帯電話で連絡を取るようになった。始めはメール、そして電話。
初めて電話に出るときは年に似合わずまるで少女のようにドキドキした。

そして、実際に会おうと言う話になった時。
戸惑った……私は、可愛くは無い、美人でもない……そんな私と会って絶句しないだろうか?落胆しないだろうか?そんな不安もあったが、会いたいと言う気持ちの方が大きかった。

新幹線を降りて、改札へいく……
ドコにいるか探してキョロキョロしていると、ゆっくり近づいてきて私の名前を呼んだ人。
電話をしていたせいなのか、あまり違和感なくすぐに、会話が始まる。
あっという間の時間だった。

「またね」

そんな言葉が嬉しくて、帰りの電車が悲しくて……初顔見せは終了した。

それから……何度も時間を見つけては出かけていった。
この人と将来が見えればいい。そう思ったのは初めてだった。

スーツを着て、実家に現れた彼を見ているとなんだかクスクスとした笑いが込み上げてきた。

そして、山あり谷あり、色々あったけど、私の隣にはまだ彼がいる。
これからもずっと彼がいるだろう。

そうね、せめて私が死ぬ時まで隣にいて欲しいかな?
私が死んで、貴方の隣に別の誰かが居たとしても、それは構わない。
だって、私が死ぬまでは隣にいてくれたんだもの……

私はきっとこれからも貴方に迷惑をかけていくんだろうね。
貴方はきっとこれからも私に迷惑をかけていくんだわ。
楽しい事も、辛い事も、悲しい事、嬉しい事も……
ずっとずっと、どちらかの命が尽きるまで、隣に。

恥かしくって言わないけれど、きっとコレは2人の【運命】
そうなるとこうなっていくと決められていたんだろうね。

死んでからの【運命】と生きている時の【運命】
その2つに貴方が存在していること、そうね、今は「よろしくね」死んだら「ありがとう」って言えそうよ。

貴方の隣で笑って言えるわ。
そう、きっと……

~~~~~End