秋葉さんと吾妻さんが本気で探しに来る。


そう想像するだけで、鳥肌が立つ・・・


そう長くは無い。


そもそも逃げれるわけがない。


では、どうしたかったのか?


秋葉さんは、カンナが金を持っていると言う。


では、あのカバンの中身は金なのか?


最悪でも金を返せば、命までは取られないのでは無いか?


どう考えても、児嶋より鳥越が殺された方が騒ぎになる。


児嶋は警察に捕まった。


鳥越も吾妻達に捕まった。


鳥越が警察に行った所で自分も覚醒剤で捕まるだろうから


きっと何かしらのペナルティを課せられて、放免されるだろう。


となると、見せしめ的に殺される可能性が高いのはカンナの方だ。


時間が無さすぎる・・・


秋葉さんが俺のために上手く立ち回ってくれたとしても


カンナを助ける事は難しいかも知れない。


どうすれば良い・・・


なぜ、こんな事をしたのだろう?


洋介はある一つの感情が湧いていたことにうっすら気づいていた・・・


そして、洋介は頭をフル回転させながら、ホテルへと戻った。



ホテルへ戻るなり、カンナが怯えた様子でソファに腰かけていた。


「戻ったよ・・・」


そう言うと覇気のない眼差しがこちらへ向いた。


「お金・・・盗んだんだ・・・?」


洋介は言葉を選んだつもりで声を掛けたが、発した言葉があまりにもストレート過ぎて驚いた。


「お金?」


「薬を売ったお金・・・」


「違う!私じゃない!」


ヒステリックな声が静寂に包まれた部屋にこだまする・・・


「じゃあ、そのカバンの中身は?」


「着替えです」


「見てもいいかな?」


「・・・いや・・・」


「どうして?」


「恥ずかしいから」


「俺は君を信用したいんだ。」


洋介は、本心からそう思っていた。


彼女を信用したい。


どうにかして、この窮地を乗り切りたい。


それには彼女の協力が不可欠だった。


「今の状況分かる?」


カンナは腫らした目を洋介に向けて首を振った。


「君が疑われてる。このままだと俺たちは殺されるよ。」


殺される。


この言葉にカンナはギョッとした表情を見せた。


薄々は感づいているのかも知れない。


ただ、単語として発せられるとその境地に立たされている人間にとっては、これほど影響があるものは無い。


「だから、本当の事を教えて欲しい。俺も死にたくは無い。」


そう言うと、カンナは黙って首をふった・・・





「本当に違うの・・・」





か細い声で・・・