新人弁護士としての1年間だけでも、実にいろんな法律相談に出会いました。
私がその相談の中で最もよく使った言葉は何かと考えたとき、それは「難しい」という言葉ではなかったかと思います。
相談を受けて、私は「あなたの望んでいるような結果を実現するのは正直言って難しい」と言うことが、多かったように思うのです。
一番よくあるのは、何らかのお金の支払いを請求できる立場にありながら、相手にお金が無いという場合です。司法試験では、「請求できるか」という問に対して「請求できる」又は「請求できない」を答えればよいのであって、「回収できるか」までは答える必要はありません。でも現実には、回収できるかこそ重要で、回収可能性のない勝訴判決などただの紙切れです。
また、相談者のお話が事実なら何らかの請求ができるはずであっても、証拠が全く無いという場合には、訴訟をしても難しいと答えざるを得ないこともあります。
それと、本当はこれはあってはならないことですが、正直に言うと私の勉強不足のために、できるはずのことを「できない」と言ってしまったことがありました。その後も継続して事務所に相談に来てくださった場合などは訂正できるのですが、市役所の相談等で1回限りの機会の場合には、お詫びして訂正することすらできません。そういうときは、申し訳ないやら悔しいやらで、自転車に乗ったりシャワーを浴びているときに思わず「ぎゃあ!」とか「馬鹿!」とか叫んでしまいます。
こうして振り返ると、気がつかないうちに、相談者の方からすれば弁護士から泣き寝入りをすすめられているように感じてしまうことがあったのではないかと反省します。今年は法律技術と面接技術をなんとか向上させて、相談者の方がそういう気持ちにならないようがんばりたいと思います。