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èVino-ゴリツィア支店

出会った造り手たちの話やイベントなどなど、、、。

皆さんこんばんわ~!

 

と言ってもかな~り久々の投稿となってしまいました、、、。

あまりに久しぶり過ぎて、どう書き始めていいのか覚えておりません、エヴィーノでございます、、。イタリア訪問も途絶えてますが、せめて新しくお付き合いを始めた造り手だけは、しっかりとご紹介していこうと、気持ちを切り替えましてご紹介させていただきます!!

 

まず第1弾として、今月よりリリース準備が整いました造り手、「Monte di Graziaモンテディグラツィア」をご紹介させていただきます!!

 

カンパーニャ州サレルノの西、世界遺産としても名高いアマルフィ海岸から内陸に入ったトラモンティの町。海まで直線距離で5Km程度でありながら、町の中心地で標高が400m越え、、。ブドウ畑のあるエリアだとさらに高く、500m~600mまで高くなる山岳地域。

4月に久しぶりに訪問してきましたが、あいにくの雨、、。気温もかなり低かったです、、。

ほとんどが急な斜面で平地が少ないトラモンティの町。畑として使える貴重な平地を最大限に活用するため、写真のような棚仕立て(ラッジェーラ式)が今でも残っています。

 

この地で、地域のホームドクターとして勤めてきたアルフォンソ。過疎&高齢化が進むトラモンティを愛し、地域の人々の健康を守ってきた人物。そして、彼自身もトラモンティ生まれ。この土地の食文化や伝統の農業を守ろうと、医者を続ける傍らで、先祖より受け継いできたブドウ畑からワイン造りを行ってきました。

実は私、新津、今回初めて行ったワケではなく、、、。10年以上前から知っており、トラモンティにも何度か行ったことがありました。ホームドクターとして町の人々から慕われるアルフォンソ。なんとも優しく、いつどんな時でも温かく迎えてくれる彼の人柄には、本当にいつもお世話になってきました!

 

樹齢は50年は軽く越えるティントーレの樹。この写真の樹は約120年ほどといいます、、(驚)

こんな太いブドウ樹の幹は他では見たことがありません、、、。ほとんどの樹がフィロキセラの影響を受けていない、すべて台木のない自根で植えられている畑、、汗。聞けば聞くほど圧倒されてしまいます。

 

土壌はヴェズービオ由来の火山性土壌。見た目は土のように見えますが、細かい鉱物粒子や石礫が大半を占めています。訪問した日も結構な雨でしたが、畑の表土がぬかるむことはなく、水はけが非常に良いといいます。

 

標高が高く、昼夜の気温差があり、火山性のミネラル豊富な土壌、そして自根で高樹齢のブドウ畑、、。しかし、まだそれだけでは止まりません。

このソレント半島周辺では、顆粒状の鉱物や砂が多い特徴的な土壌の影響でか、フィロキセラの被害を受けなかった希少なエリア。それもあり、他の地域では絶滅しているようなギリシャ時代のブドウ品種がそのまま数多く残っている地域でもあります。このトラモンティでも、オリジナルとされる黒ブドウ「Tintoreティントーレ」や、白ブドウの「Pepellaペペッラ」など、他では聞いた事のないブドウが、樹齢100年を越えるよな状態で存在しています、、、。

粒が大きく、かなり間隔をあけて結実するティントーレ。果皮だけでなく、果肉も赤いという特徴があります。

どれだけ熟しても、すべての粒が完熟しなというペペッラ。名前の由来は未熟なブドウがPepe(胡椒粒)に似ているから、との事。

 

これほどの地域の特徴やオリジナリティを持つモンテ ディ グラツィア。しかし、それだけで必ずしも素晴らしいワインができるのか、、それは違うと思います。アルフォンソ自身、地域の人々の健康を守る医師としての使命が優先されますし、高樹齢のブドウ畑ではトラクターが入る余地はありません。すべてが背作業となってしまうし、時間も必要です。

 

そんな抜け出す余地もない中で、ブドウ畑を守り続けてきたアルフォンソ。そこに一つの転機が訪れました。息子であるフォルトゥナートは大学で農業を学び、2015年頃より畑仕事を中心に手伝い始めました。

大らかでにぎやかなアルフォンソと違い、恥ずかしがってあまり出てこないフォルトゥナート。しかし、几帳面で丁寧な畑仕事と、深い考察をもって挑む醸造には、本当に期待の一言です!

 

アルフォンソの頃は具体的ではなかった「ワイン造り」についても、フォルトゥナートによってさまざまな取り組みが始まりました!

フォルトゥナート曰く「ティントーレは非常にマイナーで個性的でありながら、まだその本当に魅力を伝えるようなワイン造りが行えていなかった。晩熟であるこの果実が、その本来の姿を見せるためには、圧倒的に【時間】が足りなかった」。

 

フォルトゥナートが本格的に醸造を任された2017年、記憶にも残るような猛暑で水不足となる特徴的なヴィンテージ。それまでアルフォンソが考えていた「収穫から約2年でのボトル詰め」から、「収穫から4年間の樽熟成、ボトル詰め後1年以上の熟成」という驚愕ともいえる熟成期間を取りはじめました。

 

そして今回、合わせて飲んだのが2014年のロッソ!

2014年は寒く雨の多かったヴィンテージ。もともと気温差の激しいトラモンティでは、その影響がより強く出てしまったといいます。その結果、強すぎる酸が前面に出てしまった味わいに、、、。

しかし、約9年という歳月を経た2014、鋭すぎた酸は丸みを帯び、酸の奥に甘味さえ感じる状態に!!

特徴的な甘みを感じる酸、軽快でいて複雑な飲み心地。そして繊細ながら緩やかに伸びる余韻、、。他のどのブドウ、どの地域のワインにも例え難い味わい深さ。これがフォルトゥナートが思い描くティントーレの個性なんだと直感しました!

 

白は、ビアンカテネーラ、ジネストラ、ペペッラ3種類の地品種によって造られる2つのワイン。

通常のビアンコは、アルフォンソのの頃から造り続けているスタイル。果皮との接触はペペッラのみ、約1日ほど、それから3つのブドウを合わせて醗酵&熟成。「土地・ブドウ由来の強い酸が、この土地の個性だと信じられてきた。でもそれは真実ではなく、強い酸に包み隠れているブドウの特徴を引き出すには、やはり時間をかけることが重要」、そう話すフォルトゥナート。タンクの中で1年、ボトル詰めしてから1年、現時点で約2年の熟成期間を取ったことで、溌剌とした酸と個性的な果実味、一般的な白ブドウには感じ得ないスパイスの感触は他の地域、ブドウでは感じ得ない味わいとなりました。

 

そして、ペペッラの果皮にポテンシャルを見出したフォルトゥナートが、実験的に造り始めたビアンコ スプリティリオーネ。果皮と共に約1週間の醗酵を行ってから、3つのブドウで醗酵・熟成。

 

スプルティリオーネSpurtiglioneはナポリの方言でコウモリの意(pipistrello コウモリ)。ペペッラからの果皮のニュアンスによって、丸み、厚みを感じる非常に個性的な味わい。火山性土壌由来のミネラル、ス パイスや柑橘のニュアンスを強く感じます。現時点ではまだまだ粗削りなイメージも感じますが、香りの広がり、味わいの幅広さ、とても可能性を感じるワインだと思います!

 

果皮だけではなく、果肉にも色素があるティントーレ。その個性を生かし、果皮との接触時間を取らず直接プレスして造られるロザート。それでも十分な色合いを持っていることに驚かされます。その色合いだけでなく、溌剌とした酸にも驚かされるロザート。背筋を正されるような鋭さ、そしてアセロラや柑橘を思わせる骨太な酸。そして土壌由来のミネラル分を舌先に感じます。一見「ただ酸っぱいだけ」と思われがちですが、早摘みの未熟さからくる酸味ではない、完熟した果実の持つ酸。酸味の奥にある甘味、味わい深さを感じていただけるワインだと思います。これほどの酸を持ったワイン、、やはりワイン単体よりも、強く食べ物を要求するワインであることは間違いありません!

 

赤ワインは、上記のロッソ2014をいただくことが出来ました!9年もの歳月を費やしたことで、酸の奥に隠れていたティントーレの個性がはっきりと感じられる味わい、、。アルフォンソの思い描いてきたことを、息子のフォルトゥナートが完成させたかのような素晴らしさ、、涙。

 

そしてもう一つ、長期熟成に舵を切ったロッソとは対照的に、ピエディロッソを中心として、フレッシュさを愉しむテーブルワイン的存在、ロッソ メローニャも実験的にですがリリース。果実のフレッシュさ、飲み心地はもちろん素晴らしいのですが、タンニンが非常に果実的、硬さはありますが全く嫌味ではない特徴的な味わい。唾液腺をくすぐられるかのような止まらない味わい!

 

以前から知っていたモンテ ディ グラツィア。当時は「希少な地域、環境、個性的なブドウ品種、、」、という意味では、確かに興味を持てる造り手でした。しかし、プロダクトとしてのクオリティ。そして何より、ワインを造りにおけるフィロソフィや覚悟という意味では、まだまだ足りない部分が多かったように感じていました、、、。

 

しかし、今回改めてアルフォンソと話し、そして何より彼の築いたモノを引き継いでさらに昇華させようとする息子、フォルトゥナートの強い想いは、この7年間で明確に具現化されていると感じました!

 

そして、、、ホント昔から大好きです!!

奥様のアンナが造ってくれるスパゲッティ ポモドーロ、、、涎。

モンテディグラツィアのブドウ畑の下で栽培した自品種のトマトを収穫し、毎年ホールトマトにして保存しています。そのトマトとニンニク、オリーヴオイルだけ、、というシンプルさ!しかもトマトソースはパスタに軽く絡む程度、、しかしこれが恐ろしいくらい美味しいんです、、汗。

今年春の訪問で、1~2番に美味しかったのは、このポモドーロと言っても過言ではありません。

このホールトマトも、量は極僅かですが、今後はワインと一緒に届きますので、ぜひ皆さんにも味わってほしいです!

 

というワケで、簡単ではございますが新しく加わりました造り手、モンテ ディ グラツィア。

希少な生産地域にあり、希少なブドウ品種が当時のまま残る環境。しかしそれだけではなく、そのブドウや地域の持つ個性を最大限に引き出すための挑戦、そして時間を費やしたことで見える唯一の個性。

単なる言葉だけではない、味わいとしても表現されたモンテ ディ グラツィアのワイン。

酸っぱさの中にある旨味、甘味をぜひ感じていただきたいワインです!

改めまして、どうぞ皆さまよろしくお願いいたします~!!