新年の抱負『朝充実2016』、(いまのところ)続いています。
その朝の時間に、昨年12月に逝去された小鷹信光さんの『翻訳という仕事』を読了しました。
1985年に刊行され、1991年に改訂版が出た本書。
もう20年以上も前の著書なので、翻訳出版の状況や翻訳家の立場など時代にそぐわない部分や、児童書の翻訳を専門としている私には当てはまらない箇所がありましたが、著者の自分にも他人にも厳しい姿勢に背筋が伸びる気がしました。
巻末に具体的な翻訳のコツが挙げられています。単数・複数に注意するとか、指示代名詞の乱用はするなとか、語尾に変化をつけろとか。その多くは、すでに頭では分かっているもの。
でも、それらのすべてに気を配りながら翻訳するのが……ほんとーーーーーー(x100)に難しい。
一冊の本を訳しおえ、見直す段階に入り、たとえば「ながら」や「こと」、一人称の乱用に気をつけて読み返そうと思うと、そのほかのミスは見落としてしまいがち。
訳文は見直せば見直すほどいいものに仕上がる、というのは、そういう理由からなのでしょう。
とはいえ、ずっと付き合ってきた原稿だと、見直しているつもりが、いつの間にか字を目だけで追っている、なんてことも(汗)。
〆切という物理的な制約があるなかで、どれだけ根気よくしぶとく、そして集中して見直せるか……粘り強さは、翻訳家の大切な資質のひとつという気がします。
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余談ですが、徳間書店から出ている「ものたま探偵シリーズ」の作者ほしおさなえさんは、小鷹さんの娘さんなんですね。
モノに宿った魂の声が聞くことができる子どもという設定が興味深くて、出たばかりの一巻を手に取った記憶あり。
今調べてみたら、好評のようで、3巻まで出ていました。