平成28年8月8日午後3時、天皇陛下からのビデオメッセージが、各テレビメディアを通じて一斉に流されました。普段は天皇のことをあまり意識せず生活している人でも、お言葉が始まったらテレビの前で姿勢を正して視聴していたという方も多かったのではないでしょうか。そして、聞き進めるうちに何とか陛下の望みを叶えて差し上げたいと思われたのではないでしょうか。



 今上陛下は、これまで全身全霊をかけて象徴天皇としての勤めを果たしてこられましたが、高齢の身のまま在位し続けることにより、それが十分果たせなくなる恐れがあり、それなら自分の目が黒いうちに退位して、後に続く皇嗣である皇太子に譲位し、天皇としての在り方が確実に次代に伝わったことを確認しておきたいと願われたのではないかと拝察するわけです。
 故にこれは、天皇陛下が「もう疲れたから天皇をやめたい」などと私的な弱音を吐かれたのではなく、国民の安寧を祈ってこられた陛下の象徴としての公的なお務めが、滞りなく次代に引き継がれてゆくことを願われた故のことであろうと考えます。また、どこまでも公務を減らしていくことや、摂政を置くなどということは、陛下はお言葉の中で明確に否定しておられました。

 しかし、また同時に、二千年以上も続くとされる皇室の歴史と、皇室とともに歩んできた日本国民にとって、今何か重大な問題が起こっていることを陛下が全国民に伝えたいと思われたため特別にお言葉を発せられたとも考えるわけです。

 今回と同様の直々に賜るメッセージは過去にもありました。今上陛下がお言葉を発せられたのは東日本大震災の発災時でした。そして、昭和天皇がお言葉を発せられたのは終戦の詔、すなわち玉音放送でした。つまり、今回のメッセージもそれだけの重大事であると察せられ、我々はそのように受け取り、それに即した行動をとる必要があろうかと考えます。


 日本国憲法の第一章「天皇」の第二条には、「皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する」とあります。

 つまり、皇位に関することは、必ず皇室典範の規定によらなければならないわけです。

 皇室典範の第一章「皇位継承」の第四条には、「天皇が崩じたときは、皇嗣が、直ちに即位する」とだけあります。

 つまり、陛下が望まれている生前退位と譲位は現行の皇室典範には規定が無く、憲法第二条を無視するのでなければ、典範の改正が必要なのです。

 以上を鑑みれば、皇室典範の改正を回避し、一代限りの特別立法で済ませようという、現在政府で検討されているような行き方は明白に憲法違反であると判ります。
 また繰り返しになりますが、どこまでも公務を減らしていくことや摂政を置くことなどは、陛下のお言葉の中で明確に否定されており、有り得ないことです。


 さて、憲法は国内法より上位の存在であり、立法は憲法の精神に基いて行われなければなりません。つまり憲法は国家を縛って国民を守るものであり、それが立憲主義なのです。しかし、現政権には憲法違反の前例があります。本来憲法改正が必要な、憲法違反となるような事項を含む安保法制を、数を頼みに成立させてしまいました。このように不誠実な政権であるから、陛下の意向をも無視しかねないことを恐れねばなりません。

 政府には、憲法を無視してでも皇室典範の改正を回避したいという動機が何かあるのでしょうか。おそらくそれは、皇室典範が改正された場合、典範第二条の皇位継承順序の改正にまで及ぶことを恐れているのでしょう。つまり、女性天皇および女系天皇の誕生です。

 しかし、ここで思い出さなければならないのは、この度のメッセージにおける陛下の願いは象徴天皇としての務めが安定的に継承されることだということです。つまり、今上陛下から皇太子殿下につながったとしても、皇太子殿下の次が続かなければ意味が無いのです。
 現行典範のままでは、皇太子殿下が即位されれば、その直系の親王がおられないため次の皇太子が空位となってしまうのです。故に、陛下の願いを完全に叶えて差し上げるには、皇太子殿下の次に直系の内親王である愛子様が皇太子になれるように、即ち内親王が立太子して、後に天皇にも即位できるように皇室典範を改正する必要があるということです。

 立法に携わる者たちが逆賊・朝敵の汚名の甘受を恐れないのでなければ、陛下の真摯な願いを叶えて差し上げようとするのが当然であろうと考えます。


 さて、与党自民党の集票団体の一つとされる日本会議は、現在も与党に対して強い影響力を保持していますが、男尊女卑的性質が極めて強い団体でもあるとされています。このような保守系の団体と戦後の与党はどちらも、大東亜戦争の敗戦以降米国に対して全く頭が上がらず、そのプライドを保つには男尊女卑という歪な方向に向かうしかなかったと推察されます。
 それゆえ皇室典範においては、「皇位は、皇統に属する男系の男子」のみに限るという部分に異常にこだわり、その改正には常に反対の姿勢を取るのだと考えられます。しかも明治期に策定された旧皇室典範は、江戸期の武家由来の男尊女卑の風潮を引きずりつつ、明治期に戦争できる国へと脱皮するために、男性性を強化せねばならなかった時代背景を慮って作られた物であったわけです。にも拘らず、明治の典範から現行典範にも引き継がれた男系男子に限るという部分こそが日本の伝統であると思い込んでしまったのでしょう。

 しかし、時代とともに変わっていくのが因習ならぬ伝統であるからには、少子高齢化の時代に合わせた仕様を志向し、また男尊女卑を忌避する真に文明的な時代の到来をも見据えねばなりません。
 さらに日本の伝統と言えば、縄文時代や平安時代、江戸時代といった平和な時代には多くの場合女性の方が立場が強く、また尊ばれてもきたわけです。縄文期において権威者だったシャーマンを象った土偶はみな女性ですし、平安前期の小野小町は思いを寄せる深草少将を99回ふったとされ、また江戸の庶民は女性から三行半を突きつけても良かったそうです。男尊女卑の行き過ぎた現代日本において、少しその方向の伝統へと回帰することに一体どれほどの不都合があると言うのでしょうか。
 そもそも、皇室の祖先である皇祖神・天照大神は女性の神であり、神話と一続きになっていることで権威が強化されてきた皇室は、その起源である神話の部分ですでに女系なのです。皇室を尊び伝統を重んずる立場を標榜する者なら、よもや神話を否定しないと思うのですが…。

 皇太子の空位やそれによって起こる皇統断絶の危機を回避することは皇位の安定的継承に欠かせす、またそれが今上陛下のたっての願いでもあるのですから、速やかに皇室典範の適切な改正を行い、陛下に安心していただくのが臣下(現在なら政治家がこれに当たる)の採るべき道ではないかと考えるわけであります。例えそれが、男系派の方々の嫌がる女性天皇や女系天皇に道を開くものであったとしてもです。
 さらに言えば、愛子帝の誕生こそが多くの日本人に天照大神の再臨を感じさせ、それこそが日本国民の覚醒につながるかもしれないとも思われるのです。



・「天皇陛下 ビデオメッセージでお気持ちを」
https://www.youtube.com/watch?v=kCGk4IrMk-Q



・【緊急動画】「譲位実現への祈り」
https://www.youtube.com/watch?v=HZyGNmToXpQ



・『生前退位・特別法は「違憲の天皇」を生む!』
https://www.youtube.com/watch?v=aqw7Z2lYOAk&list=PL8MXovnagTGjIZMDY5o-hl8f5d-6f6CoM&index=2





    当ブログ内関連エントリー

・エントリー「英国の女優、エマ・ワトソンの国連本部における演説から世界平和について考える」
http://ameblo.jp/natural-national//entry-11934622176.html

・論文「日本文化私考」
http://ameblo.jp/natural-national/entry-10725700914.html