2月20日のNHKためしてガッテンは「あのツライ痛みSP」と題しただけで内容のわからないタイトルでした。
推定患者数260万人。医者にかかっているのは60万人。あとの200万人は我慢している。
ケース1.Sさん(43歳)♀。会社員。20代後半から生理痛重症化。鎮痛剤で誤魔化して3年。30代になると激痛になり、市販の鎮痛剤が効かなくなる。毎月仕事を休む。婦人科で「卵巣が腫れている」と言われる。――子宮内膜症が卵巣内で起こり、卵巣チョコレート嚢胞(卵巣嚢腫)。
ケース2.Tさん(37歳)♀。2児の母。20代から生理痛が重い。1年前背中と胸に痛み。「肺が破れている」と診断された。「肺にも子宮内膜症がある」と。――子宮内膜症が肺で起こった。
子宮内膜症患者は・・・生理がだんだん重症化し、鎮痛剤やカイロで温めても効かなくなる。しかし、「付に1日・2日だから」「みんな我慢している」「生理は病気じゃない」こうして我慢しているうちに悪化する。
(正常な生理周期):卵巣で排卵準備→卵巣からエストロゲン分泌→子宮内膜増殖(卵子のベッドができる)→排卵→卵胞からプロゲステロン分泌→子宮内膜が肥厚(卵子のベッドが分厚くなる)→着床しなかった→内膜剥離(月経)。
※剥離する子宮内膜はプロスタグランジン(子宮を収縮させる)を分泌して月経をスムーズにする。これが多いほど生理痛が重くなる。
しかし、もし子宮内膜が腹腔内や別の臓器内に存在すると・・・
!卵巣でエストロゲン・プロゲステロン分泌→他所の子宮内膜も増殖→着床なし→他所の内膜も剥離。
ケース1.―卵巣内に内膜・・・増殖←→剥離を繰り返し、卵巣内に経血が溜まって腫れる。
ケース2.―肺に内膜・・・増殖←→剥離を繰り返し、肺に穴が開く。
※腹膜にできた内膜症はブルーベリースポットと呼ばれる。
排卵時、卵巣から卵子が出ると卵管が迎えにいくが、普段は離れていて腹腔に開放されている。
――月経時、経血と内膜は子宮口側だけでなく卵管側にも逆流して腹腔内に散っていく。
・鳥取大学医学部教授・原田省「経血の逆流はほとんどの女性で起こっている」「月経時に開腹すると90%以上の女性の腹腔内に月経血がある」「内膜症になるのは10%」「健康な人では逆流した内膜は免疫機構によって排除される」「排除できないとき内膜症が起こる」「子宮内膜症は子宮の病気ではない」「横隔膜や肺に起こる内膜症は右がほとんど」「肺に起こるのはまれ」
・子宮内膜症チェック・・・1.生理痛がひどくなってきた:鎮痛剤が増えた、効かなくなってきた。2.生理時以外も下腹部痛がある:子宮・卵巣と腸などが癒着すると神経を刺激。3.排便痛・性交痛がある。
「子宮内膜症は女性のQOLを著しく落とす」
・病院では・・・問診・内診・エコー検査(卵巣チョコレート嚢胞の有無が分かる)
(月経回数の考察)
昔:初潮15歳―閉経50歳。出産回数が多く、妊娠中・授乳中は生理止まる。一生の間の月経回数240回。
現代:初潮12歳―閉経50歳。出産1回とすると一生の間の月経回数430回。
―原田「月経回数が多いほど内膜症のリスクが高くなる」「ライフスタイルの変化による」
・萩原智子さん(2000年のオリンピックで200m背泳で4位)が子宮内膜症であることを公表。重い生理痛だった。2年前に悪化。卵巣が腫れて他の臓器とも癒着があった。婦人科で不妊の可能性を宣告された。
・多くの女性が婦人科にいけない理由・・・内診が恥ずかしい、根本治療がなさそう、「卵巣・子宮を取れば?」と言われそう、手術が怖い、薬の副作用が怖い・・・。
―原田「子宮内膜症患者の半数が不妊」「腹腔鏡を使った手術で負担が少なく卵巣機能も残せる」「チョコレート嚢胞は1%が癌化」「排卵を抑える薬(ピルと同じ成分)は長期に使えて副作用が少ない」「根治は難しいが閉経までコントロールできる」
以上が番組の内容でした。
まず、子宮内膜症が増えた理由として女性の初潮が早くなり、同時に出産回数が少なくなったことで妊娠・授乳期間が減少した結果生涯月経回数が増加し、それをリスク要因として上げています。しかし本当にそれだけでしょうか?
月経時の子宮内膜を含んだ経血が子宮口側だけでなく卵管側に逆流するのは仕方がないとして、その溢れて腹腔にばら撒かれた経血成分を処理するのは免疫細胞、おそらく機動的に動けるマクロファージでしょう。この不良細胞を処理する免疫機構がしっかり働けば子宮内膜症にはならないわけです。また腹腔に散った内膜がなぜ横隔膜を超えて肺まで到達したのでしょうか?
ここで西原克成氏の免疫理論から考察してみましょう。口呼吸で喉の免疫失活・冷飲食で腸の免疫失活→白血球が機能不全になり身体中に常在菌などがばら撒かれる→身体中で白血球による処理が追いつかなくなる→月経により子宮内膜が卵管側に溢れる→不良細胞である内膜も処理できない→白血球細胞内に抱えたまま遊走→腹膜・腸壁・卵巣・横隔膜・肺・・・などの細胞に内膜を置いてくる→その場所で内膜症が発生!
例えば内膜が肺に送り込まれた場合、肺胞マクロファージが失活していたら肺で内膜が増殖と剥離を繰り返し、肺が破れるという仕儀になるでしょう。
マクロファージを含む白血球が活力を失う他の原因として長期の強いストレス、電磁波・放射線、タバコなどの毒物、細胞に必要な栄養の不足などがあります。肉食により腸内細菌が悪玉化してできた毒物も免疫不全に手を貸しているでしょう。強いストレスがあるから呼吸が浅くなり、鼻呼吸を心がけていても口呼吸になってしまうという機序もあるでしょう。
そして最も危険なのは生理痛の痛みを抑える鎮痛剤の常用です。これは痛み物質であるプロスタグランジンなどを、血流を阻害して抑える薬だからです。血流が妨げられれば腹腔内にばら撒かれた子宮内膜を処理するための免疫細胞を必要な部位に送り込めなくなります。さらにこの薬は同時に交感神経を刺激してとくに消化器官周辺の血管を収縮させてしまいます。
子宮内膜症が増えた理由は女性を取り巻く環境が著しく悪化したせいではないでしょうか。
ちなみに初潮が早くなる理由は睡眠時間の短縮が大きいようです。
さて、以下は当ブログ内の論文「疾病、医療、および生命についての特殊理論」でも紹介した東洋医学の五行理論から構成された五臓色体表の一部です。
五臓之色体表
五行 木 火 土 金 水
五臓 肝 心 脾 肺 腎
五腑 胆 小腸 胃 大腸 膀胱
五主 筋膜 血脈 肌肉 皮毛 骨髄
五根 眼 舌 口唇 鼻 耳
五気 風 暑 湿 燥 寒
五味 酸味 苦味 甘味 辛味 鹹味
五液 涙 汗 涎 涕 唾
五志 怒 喜 思 悲憂 恐驚
「木」と「土」の項を見てください。東洋医学における「肝」は「筋」を支配し、平滑筋の塊である子宮(東洋医学では女子胞と呼ばれる)も含まれるようです。また「肝」は気血水のうち「血」を貯めておくタンクの役割を持っています。血が滞る状態は瘀血と呼ばれますが、血流から完全に疎外された腹腔内に撒かれた経血は瘀血の極みと言えるでしょう。「脾」は「胃」とともに消化器官全体を支配しながら、「肌肉」(=体の空間を埋める組織・細胞)も支配しています。ばら撒かれた子宮内膜による影響を最も受けるのは腹膜・腸間膜であり、腸と卵巣などを癒着させるのも「肌肉」でしょう。東洋医学では腹内の固定的な痛みのある腫れものは「癪」と総称され、時代劇などで女性が「持病の癪が・・・」と訴えるシーンはよく見られます。身分の高い武家の娘さんに多いことが注目されます。
鍼灸の証では肝虚脾実、脾虚肝実、肺虚肝実、腎虚脾実など様々に想定され、また漢方薬では駆瘀血剤を使うのではないでしょうか。皮膚細胞や末梢神経細胞でNO(一酸化窒素)やβ-エンドルフィン、コルチゾール、オキシトシンなどが合成、分泌されているという皮膚科学の研究を以前のエントリーでお伝えしました。鍼灸による皮膚への微妙な操作が、副交感神経を優位(腹部臓器への血流増加)にするとともに、β-エンドルフィン(鎮痛)、オキシトシン(ストレス緩和)、コルチゾール(抗炎症)、NO(血管拡張)の効果を発揮するはずです。免疫力を高めることも知られており、マクロファージが異所性の子宮内膜の処理を促進することも考えられます。このような効果を現わすには伝統鍼灸における証が合っている必要があると思われますが。ちなみにオキシトシンは元々子宮収縮の働きがあるホルモンですので、月経時に子宮収縮に働いてスムーズにするプロスタグランジン(痛み物質)の効果を一部代替して減らす効果もあるのでは?と考えています。
西洋医学では、根本治療はないから閉経までピルでコントロールしましょうと言った病です。副作用の少ない薬ができたと言ってもピルという不自然な方法で、後々どのようなリスクを孕んでいるかも不明です。自然治癒力強化と体質改善で根治に迫る東洋医学を選択肢に入れてみるのはいかがでしょうか?
当ブログ内関連エントリー
・論文「疾病、医療、および生命についての特殊理論」・・種々の医療問題と西原克成氏の免疫理論、東洋医学・鍼灸の効果などについて。
http://ameblo.jp/natural-national/entry-10538778807.html
・論文「食文化防衛論」・・食の欧米化や添加物・残留農薬・狂牛病などの問題から世界大の環境問題まで。
http://ameblo.jp/natural-national/entry-10589476219.html
・エントリー「腰痛の85%は原因不明ですよ」・・・後半で皮膚科学から鍼灸の効果に触れています。