認知症介護研究・研修大府センターは、4月18日、若年性認知症コールセンターの2013年度報告書を公表した。

報告書は、同センターが実施する若年性認知症コールセンターの相談者のプロフィールや、介護認定・介護保険サービス利用の有無などをまとめたもので、第4 回目の報告書となる。2013年度の相談件数はのべ2,197件で、相談者の年代では50代が多く、男性の相談者は本人が68.0%と圧倒的に多いことな どがわかった。

近年、東京都や兵庫県など自治体にも若年性認知症の相談窓口が設置され始めたが、同センターのコールセンターは全国からの相談が集まり、経験を積んだ相談員が応対していることから、報告書は若年性認知症への理解を深めることができるものと言えるだろう。

報告書の主な内容は以下のとおり。

■年間の相談件数・相談のあった地域
2013年1月から12月までの相談件数はのべ2,197件。1か月の平均相談件数は183件で、2012年より約14%増加した。行政や医療機関、事業 所などへのリーフレットや資料送付を積極的に行っていることによる効果が表れてきたことや、若年性認知症に関心が高まってきたことなどが理由として挙げら れる。

2,197件のうち発信地域が明らかだったのは2,101件で、すべての都道府県から相談が寄せられた。東京都からは193件(8.8%) 、神奈川県からは188件(8.6%)、埼玉県176件(8.4%)、北海道167件(7.6%)、愛知県からは166件(7.6%)、大阪府からは 163件(7.4%)と大都市を擁する都道府県からの相談の割合が高い。一方で、相談が少なかったのは青森県(3件)、佐賀県(3件)、沖縄県(4件)、 和歌山県(5 件)、宮崎県(5件)だった。

■相談者の内訳
相談者の内訳では、介護者からは37.6%、本人からは37.5%とほぼ同率だった。介護者以外の親族は14.8%と昨年よりやや増加した。専門職・行政 からの相談も一定数みられたが、多くはなかった。本人からの相談で、「認知症」あるいは「濃い疑い」であることが明らかになったのは77人だった。

親族からの相談は1,152件であり、続柄不明を除く1,135件では配偶者からが最も多く(妻49.4%、夫8.6%、合計58.0%)、妻からが半数 近くを占めた。次いで、子ども世代からの相談(娘13.8%、息子5.4%、合計19.2%)だった。親世代からは3.9%、兄弟・姉妹からの相談も 8.1%見られた。

相談者の31.0%は男性、69.0%は女性で、2012年に比べて男性からの相談が減少した。続柄で性別を見ると、男性では本人からが68.0%で圧倒 的に多く、女性では、介護者である妻からが41.3%で最も多かった。若年性認知症は男性に多いとされていることから、患者に限らず不安を感じる男性から の相談が多いと言える。

年代が明らかになった1,354人では、50歳代が最も多く(28.4%)、次いで40歳代(15.8%)、60歳代(13.7%)、30歳代(12.5%)だった。

■相談に至るきっかけ
コールセンターを知った媒体については、不明を除いた1,790件ではインターネットが最も多く、31.2%だった。ホームページの閲覧回数も増えてお り、インターネットの活用は今後ますます増えていくと考えられる。昨年まで最も多かったパンフレットは30.5%と率は低下したが、テレビは昨年の 0.7%から8.4% と大幅に増加した。

電話回数については、初めてが1,168件で最も多かったが、4割以上(949件)が複数回であり、継続して相談する人が年々増加している。

■受診や告知の有無
介護対象者に関しては、男性が57.2%と女性より多く、若年性認知症は男性が多いとされていることが反映された。年齢は、50~59歳が最も多く3割以上だった。
認知症と診断されていた人は、916人(41.7%)で、人数は前回より増加していた。受診しているが、確定診断はまだされていない「濃い疑い」がある人は156人(7.1%)だった。

気づきの時期や受診日については、不明件数が多かったが、明らかになった範囲では、1年半未満が最も多く、半年未満に受診した人は20%以下だった。また、受診日から相談日までは半年未満が149件と多く、診断後早い時期に相談してくる人が多かった

告知を受けた人は54.7%で、受けていない人(9.4%)よりかなり多く、前回の報告時より増加していた。早期診断・早期治療の重要性が次第に認識され つつあること、認知症の中核症状に対する薬物療法で使われる薬も、2011年から新しい薬剤も使えるようになり、選択・併用できるようになったこと、本人 や家族側にも告知に対する理解が進んできたなどの理由が考えられる。

■合併症の有無と社会資源の活用
53.5%の人に、認知症以外の合併症があり、「なし」の割合の2倍以上であった。認知症高齢者では身体的・精神的合併症が少なくないが、若年者において も合併症を持つ人が約半数いることがわかった。合併症のうち、現在罹患している疾患では、高血圧症が最も多く、次いで高脂血症、糖尿病の順であり、生活習 慣病が多かったが、うつ病も次いで多かった。過去に罹患していた疾患では、高血圧症が最も多く、次いでうつ病、糖尿病の順であった。
年金や障害者手帳などの社会資源は37.9%が利用しており、昨年より減少し、「利用なし」 と同程度であった。利用している内容では、障害年金が最も多く、次いで障害者手帳で、自立支援医療も多くの利用が見られた。

■介護保険認定と介護サービスの利用状況
介護保険は56.7%で申請済みであったが、非該当が約1割見られた。2.5%は申請中であったが、約3分の1は未申請であった。

要介護認定を受けていた493人の要介護度は、要介護1が最も多く(25.2%)、次いで要介護2(19.1%)で、要介護4および要介護5の両者を合わせると30%であった。

認定を受けた人の60%以上が介護サービスを利用しており、デイサービスが最も多く213件、次いでショートステイであり53件だった。デイサービスは週 2回、次いで週3回の利用が多く、デイケアも同様であった。若年性認知症に特化したデイサービスやデイケアが少しずつ増えてきており、高齢者向けの事業所 でも若年の人を受け入れるところが増えてきていると考えられた。

■相談の内容
介護の悩みに関しては、心身疲労についての相談が最も多く、相談者の内訳を見ても介護者からが約8割であり、介護者の心身疲労が最も大きな問題となってい ることが伺える。次いで、 介護方法の相談も多く、介護者からが約8割であった。これらの2つに関しては、介護者以外の親族からの相談も約20%みられ、家庭介護の悩みが大きいこと がわかった。
家族間のトラブルに関する相談は多くはなかったが、その中では人間関係に関する相談が68件と突出して多く、例年と同様であった。家族以外とのトラブルに関する相談では、施設・病院への不満や苦情が合わせて43件みられた。

問い合わせは症状に関することが最も多く317件であり、そのうち半分以上が介護者からであり、介護者以外の親族からも約3割と多かった。本人からも9.2%と前回より増加した。(ケアマネジメントオンライン)

◎認知症介護研究・研修センター
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