訪問介護フォーラム実行委員会は、3月29日、千葉県千葉市で緊急シンポジウム「どうなる?どうする!2015介護保険改定と訪問介護」を開催した。

訪問介護フォーラム実行委員会(千葉県介護福祉士会)主催、千葉県ホームヘルパー協議会および認知症の人と家族の会介護福祉士会の協賛によるこのフォーラ ムでは、日本ケアマネジメント学会副理事長で服部メディカル研究所の服部万里子氏が「どうなる?どうする!2015介護保険改定と訪問介護」をテーマに基 調講演を行った。
今回の改正や来るべき地域包括ケア時代に、介護職およびケアマネジャーはどうあるべきか、方向性を示した講演の一部を紹介する。

■保険者機能の強化がケアプランに影響?

現在、国会に提出されている平成27年度からの改正介護保険では、予防給付の一部サー ビス(訪問介護、通所介護)が地域支援事業へ移されることや、一定所得のある人の2割負担、特別養護老人ホームの入所要件が要介護3以上となるなどが大き く報じられている。しかし、ケアマネジャーおよびケアマネジメントに関連する項目も多い。
まず、あまり話題には上がっていないが、居宅介護支援事業所の指定が、これまで都道府県だったものが市町村に移管される。
「なんのために?」と服部氏は問う。市町村、つまり保険者に権限を委譲することで、保険者機能を強化する目的があると服部氏は言う。
「ケアマネは市町村と連携することは大切です。しかし、保険者は当然、介護報酬を下げたいと思っているので、当然、ケアマネにも影響が出るのではないでしょうか」。
具体的には認定調査時に利用者の実態よりも軽い判定が出て、十分にサービスが使えないなどという現実が起こる可能性がある。こうした懸念があることから、「ケアマネ協会は、サービス抑制的なことがないよう方針を打ち出しています」と、暗に不安を表明した。

■資格にばかりこだわっていいのか

さらに、ケアマネの受講要件から、ヘルパーが外れる。ケアマネの資質向上については、社会保障審議会 等でも長い間議論されてきたが、それはあくまでケアマネジャーになってからの努力と実績の話であって、受験要件とは関係ないのではないか。服部氏は、 「(ヘルパー資格しか持たない)サービス提供責任者の中にも、在宅を熟知している人は多い。ですから、国家資格の有無だけで判断するのではなく、やはり実 績をみるべき」と、看板だけで判断しがちな改変に異議を唱えた。

■すべては費用抑制のため?

そして、来るべき地域包括ケア時代は、医療が大きく全面に出て、介護サービスは医療を窓口にしてサービスを 使う、という方向にシフトしていく。莫大な医療費を抑制するために、治療が終わったら一刻も早く地域(居宅)へ戻し、今度は介護保険を使って一日でも長く 居宅で暮らしてもらうことで、費用が抑制されるためだ。
「24時間介護の施設はどうしても費用負担が大きくなります。しかし、居宅なら、必要な時だけスポットで介護保険を利用するため、費用はずっと安く抑えられる」と服部氏は地域包括ケアのからくりをわかりやすく解説する。
しかも特養は要介護3以上にならないと入所要件を満たすことができず、介護認定はどんどん厳しくなり、いまや要支援でもかなり支援を必要とする状態の人が多い現状。それでも多くの人が限度額いっぱいまでサービスを使っている人は少ない。

「地域包括ケアでは、医療から介護へ、病棟から地域へと言っています。これは病院にもいられない、施設も入れない重度の高齢者が、地域に戻ってくることを 意味します。地域というのは具体的には居宅。これは必ずしも自宅を意味するわけではなく、グループホームや特定施設、サ付き住宅(サ高住)を含みます。
しかし、考えてみてください。介護の必要な高齢者が地域に戻ってきたときに、介護保険だけでは生きられません。そこで地域のケア力が試されます。お隣、ご近所、そして自治体。地域がその人を支え、家族をあきらめさせない支援を行うことが要求されます」
ここでやっと、地域包括ケアの形がくっきりと浮かび上がり、ケアマネジャーやサービス提供事業者、それぞれの担う役割が明確になってくるのだった。
「地域包括ケアでの介護は、ケアマネジャーやサービス提供責任者、地域包括支援センターがより強固に連携しないといけない。中でも在宅生活を支える訪問介 護はいっそう重要になります。一日でも長く在宅生活が続けられれば、その分給付は削減できるからです。ケアマネジャーはサービス提供責任者と連携しなが ら、利用者を支えることがポイントとなるでしょう」(ケアマネジメントオンライン)