かいごの学舎実行委員会は、3月15日、日本社会事業大学にて「かいごの学舎 in 清瀬」を開催した。

基調講演は、日本ケアマネジメント学会副理事長の服部万里子氏。服部氏は、看護師を経て居宅介護支援事業所を開設。現在もケアマネジャーとしてプランを担当しながら、高齢者医療看護福祉のコンサルティングや大学で教鞭を執っている。

服部氏は、昨年夏に報告書が提出された「社会保障国民会議」の内容をあらためて紹介。 介護保険がこれから向かう方向性を、以下のように示した。

・所得に応じた負担、自己負担
・軽度者の生活支援は保険給付から地域支援事業へ、
・訪問介護は身体介護が適切に使用されていない →定期巡回随時対応介護・看護の普及、20分未満の身体介護の活用
・通所介護は給付の効率化 →レスパイト、機能自立支援、認知症ケア、ナーシング機能に分類。預かりは減額、自立支援を重視、社会参加は有料サービスへ、
・ショートステイは機能低下や施設待機の見直し

一部はすでに次期改正に盛り込まれることがほぼ決定しているが、全体的な政策としては膨れ上がる介護保険財政を、以下に抑制するかに苦心している様子が見える。

服部氏は、今回の改正案を踏まえ、「介護保険は重度の人しか使えなくなる。在宅を支える訪問介護は、どんどん時間が削られ、そのうち身体介護も(減らされる方向で)見直しになるだろう」と予想した。

ケアマネジメントの在り方と地域包括ケアの取り組みとしては、今後は安易に入院させないアセスメントが必要になると語った。 具体的には、以下のようなものが挙げられた。

・脱水:1日1500mlの水分をどう取るか
・転倒骨折:歩かないと劣化、環境整備、杖、段差解消、筋力維持、ふらつき防止
・肺炎、風邪、インフルエンザの予防
・ノロウイルスや感染予防
・誤嚥の予防
・低栄養の防止
・病状の悪化:服薬管理、通院や診療の確保

これらを防ぐには、実は医療に詳しいケアマネや早くからの訪問看護の導入が効果的だが、現状の課題として、医療行為が必然にならないと訪問看護がプランに入らないことや、通所リハビリや訪問リハビリが最適期間に導入されないことを挙げた。 そして「現状、主治医との連携が退院時以外にはとりにくいことで、疾病悪化の予防(今後起こりうる医療的リスクのアセスメント管理)が不十分となる」と語った。

また、地域包括ケアシステムの下では、ケアマネジャーは医療と介護の連携、チームケアコーディネートに重要な役割を果たすことになるが、そのためには入院から在宅への具体的プランをマネジメントする必要があると述べた。具体的には、ケアマネジャーは入院日から病状と今後の展望を医療側から説明を受け、「自宅に戻れる状態像」を病院に示すこと、そして本人は「あきらめない」ためのかかわり、知人・親族へのかかわりや、入院時の自宅のケア(洗濯、新聞・郵便物、植木や花のケア、ペットのケアなど)にも配慮する必要があると語った。

さらに今後、介護者支援・親族への連携がますます重要となってくるとし、介護者に対しては、なにが負担になっているのかを見極め、具体的な負担軽減の方法を示すことが必要だと述べた。

地域包括ケアでは、在宅生活をより長く継続できることで給付削減につながる。そのためには在宅利用者の現状課題を抽出し、目標に向けて介護・看護・用具の具体化を盛り込むことが必要だと結んだ。(ケアマネジメントオンライン)