医療法や介護保険法の改正案を一本化した「地域医療・介護総合確保推進法案」が月内に衆院で審議入りする。医療、介護という異なる分野の法改正を一本で行うのは異例だが、いずれも国民負担増につながる内容が居並ぶだけに政府側には法案数を減らして審議時間を短縮したい思惑がのぞく。野党は「追及逃れ」と批判を強めつつあり国会審議で与野党が激しくぶつかり合うのは避けられない情勢だ。

 法案は、社会保障制度改革の実施スケジュールを定めたプログラム法(昨年12月成立)を実行に移すための内容が盛り込まれている。介護分野では、平成27年8月から、介護保険の自己負担割合(現行1割)を年間の年金収入が280万円以上の人に限って2割に引き上げると規定。介護施設に入所する低所得者への食費などの補助に関しても、預貯金が1千万円を超える単身者らを対象から外す。

 医療分野では、医療事故を調査する第三者機関を27年10月に設置。在宅医療・介護を推進するため、消費税増税分を活用した基金を各都道府県に創設することも明記した。

 本来は介護保険法と医療法にまたがる改正内容を1つの法案にまとめた理由について、田村憲久厚生労働相は「新たな医療・介護の体制を組んでいくという意味で」と説明する。ただ厚労省は他に10本の法案提出を予定しており、法案数を減らすことで国会審議を効率化したいという思惑も透けてみえる。

 「『別々の法案として審議すべきだ』『党内で十分に議論する時間がない』と自民、公明両党にも反発を受けた。与党からは何とか理解を得ることができたが、野党は手ぐすね引いて待っているだろう…」。厚労省幹部はそう懸念を示す。

 実際、国民の負担増に直結する内容がめじろ押しの法案だけに、野党は「追及を逃れたい意図が明らかだ。これを許せばどんな法案も一本化されてしまう」(民主党の長妻昭元厚労相)と反発を強めている。(産経新聞)