2月12日、介護保険法改正案を国会(通常国会)に提出することが閣議決定された。
法案の正式名称は「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律案」(以下、法律案)で、医療法介護保険法 がセットになった改正案なので、非常にわかりづらい。

法律案については厚生労働省ホームページ「第186回国会(常会)提出法律案 」に概要法律案要綱法律案案文・理由法律案新旧対照条文参照条文 、施行期日(予定)が掲載されている。

法律案の名称があまりにも長いため、新聞報道では「医療・介護一体改革法案」、「医療・介護推進法案」、「地域医療・介護総合確保推進法案」、「確保法案」などさまざまな略称を見出しに使っているので、注意してもらいたい。

■国会提出までの経緯
介護保険制度は、介護保険法の改正と介護報酬の改定を組み合わせて、見直しが行なわれている。
今回の改正案については、社会保障審議会介護保険部会 (山崎泰彦・部会長)が昨年12月20日にまとめた「介護保険制度の見直しに関する意見http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000033012.html」をもとに、厚生労働省が法案を作成した。意見についてはすでに「介護保険部会、2015年改正の主要項目を確定――介護保険制度改定の論点(10) 」で報告しているのを参照してもらいたい。

今回の法律案は医療法と介護保険法にまたがるが、同じ社会保障審議会 (西村周三・会長)のもとに設置されている介護保険部会と医療保険部会 (永井良三・部会長)の合同部会が開かれることはなかった。医療保険部会では昨年12月27日、「医療法等改正に関する意見 」を別にまとめている。なお、医療保険部会の部会長代理である田中滋・慶應義塾大学経営大学院教授は、法律案が成立したのちにスタートする介護報酬見直し(第6期2015~2017年度)を担当する介護給付費分科会 の分科会長も務める。

ふたつの部会の「意見」を厚生労働省がまとめた法律案は、今年1月30日、自民党「厚生労働部会・社会保障制度に関する特命委員会合同会議」で了承され、2月12日の閣議決定により内閣提出法案(閣法)として通常国会に提出することが決められた。

今後、衆議院厚生労働委員会 (後藤茂之・委員長)、参議院厚生労働委員会 (石井みどり・委員長)で法律案について審議が行なわれる。

■法改正は社会保障制度改革のメニューのひとつ
新聞では法律案について、「自己負担増、15年8月から 医療・介護推進法案を閣議決定 」(時事通信)、「確保法案 地域医療と介護一体に 12日閣議決定 」(毎日新聞)、「介護利用者負担2割に 法案を閣議決定 」(東京新聞)などの紹介がある。

一方、2月14日には首相官邸で「社会保障制度改革推進本部 」(本部長・内閣総理大臣)の第1回 会合が開かれた。これは昨年11月19日、臨時国会(第185回国会)で成立した「持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律」(プログラム法)にもとづき設置されたもので、「社会保障推進本部が初会合 首相『安心取り戻したい』 」(共同通信)と報じられている。

プログラム法では、4月から段階的に実施される消費税の引き上げ分をすべて「社会保障の安定財源確保」に投入するのと同時に、社会保障制度全般の見直しを行うスケジュールが定められている。
なお、2014年度の消費税引き上げによる増収は5兆円で、約6割(2.95兆円)が年金の国庫負担をカバーするのに使われ、残りの4割を「社会保障の充実」(0.5兆円)、「消費税引き上げに伴う社会保障4経費の増」(0.2兆円)、「後代への負担のつけ回しの軽減」(1.3兆円)で分けあう(資料2-2)

ちなみに、通常国会に提出される社会保障制度改革関連法案は「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律案」(医療法改正案、介護保険法改正案)のほか、少子化対策法案、雇用保険法改正案、児童福祉法改正、「難病の患者に対する医療等に関する法律案」(新法)と盛りだくさんだ(資料2-1)

■法律案のポイント
法律案では主な改正事項として、つぎのようなポイントがあげられている。
介護保険法改正案は「3.地域包括ケアシステムの構築と費用負担の公平化」に入っていて、
①要支援1・2の介護予防ホームヘルプ・サービスとデイサービスを予防給付から市区町村事業に移行
②第1号介護保険料の低所得者負担割合の引き下げ
③「一定以上所得者」(年収280万円以上)の利用料を2割負担に引き上げ
④施設サービスの居住費・食費の低所得者対策の厳格化
の4項目になる。

また、法律案概要の「4.その他」には、「④介護人材確保対策の検討(介護福祉士の資格取得方法見直しの施行時期を2015〈平成27〉年度から2016〈平成28〉年度に延期)」とあり、「試験義務付け延期『断固反対』 日本介護福祉士会が緊急会見 」(2月14日シルバー新報)と報じられている。

在宅医療は介護保険の利用を促進?
なお、法律案が閣議決定された12日、中央社会保険医療協議会(森田朗・会長)は第272回総会 で診療報酬の改定を答申した。

診療報酬は2年ごとに見直しが行なわれているが、「重点課題」として、①居宅介護支援事業所の設置など「機能強化型訪問看護ステーション」を評価、②介護保険の訪問看護利用者に点滴が必要になった場合に「在宅患者訪問点滴注射管理指導料」を算定、③維持期リハビリテーションを介護サービスに移行した場合は「介護保険リハビリテーション移行支援料」を算定といった項目が並んでいる。
在宅医療における「医療と介護の連携」では、医療サイドから費用負担を介護報酬に移すことが促されているといえる。

法律案では、介護予防ホームヘルプ・サービスとデイサービスの市区町村事業化(給付費の伸び率の抑制)、「一定以上所得者」の利用料倍増(第6期給付費750億円削減)、「補足給付」の厳格化(第6期給付費700億円削減)など給付抑制のプランが目白押しだが、在宅医療の参入による介護報酬の膨張が予測される。(ケアマネジメントオンライン)