東京都社会福祉協議会介護保険居宅事業者連絡会のシンポジウム「これからの介護保険~区市町村事業の展望と課題~」が12日、開かれた。パネリストとして出席した東京都内の自治体関係者からは、「理念なき制度改正」などと、2015年4月に予定される介護保険制度改正への批判が相次いだ。


 介護保険制度改正では、要支援者を対象とした介護予防給付のうち、通所介護と訪問介護を市町村が主導する事業(新しい総合事業)へ移行する方針が固まっている。また、規模が小さな通所介護事業所や居宅介護支援事業所の指定権者も、都道府県から市町村に移される。

 パネリストとして参加した武蔵野市健康福祉部の笹井肇部長は、予防給付の一部が市町村の新しい総合事業に移行されることで、要支援認定を受けても、保険としてのサービスを受けられなくなる場合があることを問題視。要介護・要支援認定は介護保険のサービス受給権を審査する仕組みであることを強調した上で、「理念なき制度改正ではないか」と批判した。また、この制度改正によって、介護保険事業者の事業とボランティアによる事業が混在する上、サービス提供を決めるにあたり、市町村の関与が強まることから、「サービスの質の低下や利用者の権利が抑制される危険性がある」などと指摘した。
 
 また、八王子市福祉部高齢者いきいき課の石黒みどり課長は、新しい総合事業の制度設計は自治体に委任されている一方、訪問介護や通所介護の単価については、現在の報酬以下の単価とされている点を問題視。「事業者の参入に懸念がある」と述べた。また、新たな総合事業の中でも、特に生活支援サービスに関しては、ボランティアなどを積極活用することが提言されている点について、「(ボランティアへの安易な業務委託は)無防備かな、と思う」と指摘。ボランティアを活用する場合は、研修制度などを整える必要があると述べた。

■軽度者向けサービス「改正で一層、複雑化」―淑徳大・結城教授
 
 シンポジウムに先だって基調講演した淑徳大の結城康博教授は、今回の改正で、要支援者などの軽度者を対象としたサービスでは、介護保険給付とそうでない事業が混在するため、「一層、制度は複雑化する」と指摘。また、新しい総合事業の対象となるかどうかは、二次予防事業の対象者を見分けるための基本チェックリストだけで判断し、要支援認定は必要ないとされている点について、「(基本チェックリストによる判定を担う)地域包括支援センターが適切なアセスメントができるのか、疑問」と述べた。さらに、特別養護老人ホームへの入所者を原則要介護3以上に限定する点については、「現在の要介護認定自体に基づき、厳しい基準を設けることには不安を覚える」とした。(CBニュース)