厚生労働省は、1月16日、平成25年度第1回介護保険福祉用具・住宅改修評価検討会を開催した。

介護保険の対象となる福祉道具や住宅改修は、1998年に示された「介護保険における福祉用具・住宅改修の範囲の考え方」をベースに、新たな種目・種類を追加してきた。現在、「ロボット介護機器開発5か年計画」をはじめとする国の施策のもと、在宅の高齢者にとっても有効で高度な介護機器の実用化が期待され、介護保険の対象になるかどうかを判断する「範囲」の見直しが求められている。

そうした背景のもと、同検討会では、今後1年間にわたり、介護保険の対象となる福祉道具や住宅改修の新規取り入れや拡充について協議する。メンバーは、NPO法人支援技術開発機構理事長の山内繁氏を座長に、福祉・介護機器やリハビリに携わる公的機関・行政の担当者を中心に構成され、日本介護支援専門員協会常務理事の助川未枝保氏も委員に加わった。

第1回目のこの日の会合では、まず、介護ロボットの実用化支援の現状や、ロボットを含む最先端の介護機器を貸与する「岡山総合特区」のモデル事業についての報告が行われた。次いで、「介護保険における福祉用具の範囲の考え方について」「複合的機能を有する福祉用具の取扱いについて」の2つの議題を討議した。


■シルバーカーやリハビリシューズは介護給付の対象外


「介護保険における福祉用具の範囲の考え方について」についての論点は、次の2点。


①これまで想定していなかった有用性の高い介護ロボットが開発される可能性を踏まえ、
 介護保険給付の対象にすることが望ましい事案が生じた場合、福祉用具の範囲を具体的に検討する。

②範囲の「考え方」で示している判断要素が一般にはわかりにくいため、「具体的な例示」を加える。

福祉用具の範囲は、「要介護者の自立の促進または介護者の負担軽減を図るもの」を筆頭に、「一般の生活用品ではないもの」「医療ではなく日常生活で使用するもの」「在宅で使用するもの」「起居や移動など基本動作の支援を目的とするもの」「ある程度の経済的な負担があり、給付対象となることで利用促進が図られるもの(廉価なものは貸与の対象としない)」の7つの判断要素で決められている。

厚労省からは、「この7つに適用しないものがあった場合にどうするか。要素を変える方がいいかということも議論していきたい」との説明があり、委員からは、今後高度な介護機器が在宅でも使用されることを念頭に、福祉用具の前提条件でありながら判断要素には明記されていない「安全性に言及すべき」との意見が出た。

②の「具体的な例示」は、介護保険給付の対象外となるものを明確にすることが趣旨。厚労省が示した案では、シルバーカー(介護に着目した機能がないもの)や吸入器や吸引器、価格が廉価な一本杖やリハビリシューズなどが対象外とされた。これらは、「要望があり、給付の対象ではないものの代表例」で、新たに例示として明記することで申請などをスムーズにしたい、という意向だ。

委員からは、文言や表現が適切なのか、それぞれの種目についての解釈もわかりにくいものがある、との指摘があった。座長からは、通知は1998年のもので古くなっている、拡大解釈するなど矛盾も生じているので、1年かけて議論をしていきたい、との方針が示された。


■高度な複合機器も介護給付の対象となる可能性


もうひとつの議題「複合的機能を有する福祉用具の取扱いについて」は、介護機器の高度化が進む中、これまでの「2つ以上の機能をもつ福祉用具で、保険給付対象の種目に該当しない機能が含まれている場合は、保険給付の対象外とする」という規定では対応しにくくなっている状況を受けてのもの。

多機能の用具には、それぞれの機能が一体化されているもの、機能ごとに分離できるものがある。そこで、保険対象の機能と対象外の機能が混在している用具で分離可能なものは、「前者の機能のみ給付の対象とする」というのが厚労省案。たとえば、認知症高齢者の徘徊探知機の場合、センサーで外出を知らせる探知機能は介護保険の対象だが、メールでのお知らせ機能などオプションは対象外となる、と説明がなされた。

これについては、物理的に分離不可能なものはどう考えるのか、そもそも対象外とされているものは自立支援に寄与しないからなのか、技術革新で解釈基準にあてはまらないものが出てきた場合は?など、多様化する介護機器をどう捉えていくかについての意見が出た。

国の成長戦略のひとつとされ、厚労省と経産省が協同で実用化支援を進める介護ロボット。検討会事務方に厚労省・経産省それぞれの担当部局が加わり、何が介護保険の対象になるのか「一般則にするのではなく、個別に判断をするために、福祉用具の範囲を考える」(厚労省担当官)という検討会の趣旨からも、普及への意欲が伝わってきた。

第1回目は、厚労省が示した方向性のもと、どこから検討していくのか糸口を探るような議論に終始した。在宅の要介護者に寄与する福祉用具の選定に関わる重要な検討は、次回以降本格化していきそうだ。(ケアマネジメントオンライン)