公益社団法人日本介護福祉士会は、11月28日、介護保険制度の見直しや人材確保対策などの意見を本会でまとめ、社会保障審議会介護保険部会において、委員の内田副会長が部会長の山崎泰彦氏に「介護保険部会への意見書」を提出したと発表した。(ケアマネジメントオンライン)
以下、全文を引用する。

【介護保険部会への意見書】
私たち日本介護福祉士会は、介護現場で様々な立場から利用者に最も近い専門職として介護保険制度をより良く発展させるために尽力し、介護保険部会においても介護サービスの質の維持と向上及び介護人材の確保と処遇改善などについて提案してきました。

これからいっそう高齢化が進む中、介護を実践し介護業務を担当している介護福祉士として、サービスの質を保証し、利用者本位のサービスを提供する観点に立って、介護保険制度をより良く発展させるために提言します。

1 介護人材確保について
(1)基本的な考え方
「社会保障制度改革国民会議報告書(抄)」では「介護職員等の人材確保が必要であり、処遇の改善やキャリアパスの確立などを進めていく必要がある。」と提言されているなど、介護人材の確保が国民的な課題であることは明らかです。
人材確保のためには、介護分野で働く者の生活と労働が安定して、働き甲斐と誇りを持って働くことができる雇用環境の整備が必要であります。
具体的には、賃金の向上やキャリアアップの仕組みの導入などにより、介護労働条件を改善し、介護という仕事が名実とも高齢化を支える働き甲斐がある職業にすることが必要であり、介護労働がディーセント・ワーク〔価値ある労働〕となるような対策を進めるべきです。

(2)参入の促進
小中高等学校学生や保護者及び教員を対象としたセミナーの開催など、介護労働へのイメージアップ戦略を推進するとともに介護福祉士就学資金貸付事業の継続及び拡大、潜在的有資格者等の再就職支援の充実を図っていただきたい。

(3)キャリアパスの確立
キャリアパスの確立については、次の5点の積極的な取り組みを提言します。
① 専門的な知識・技術を研修しキャリアアップが図られるよう職員に 対する生涯研修条件の整備
② 認定介護福祉士の制度化など、介護福祉士の資格取得後のキャリアパ スの確立
③ 実務者研修への支援
④ キャリア評価システムの構築(認定介護福祉士などキャリアの評価によって賃金が上がる仕組みの導入)
⑤ 事業者(管理者)のマネジメント能力の向上のための対策などの推進

(4)職場環境の整備・改善
職場環境の整備・改善については、次の3点の積極的な取組みを提言します。
① 福祉用具(リフトなど)活用を促進するなど、腰痛防止対策を徹底すること。
② 「職場における腰痛予防対策指針」の積極的な普及・推進とともに、現場においては、指針で示す腰痛の予防対策を確実に実施すること。
③ 職員のメンタルケアのシステム化を推進すること。

(5)処遇改善
介護職員の給料が保証される仕組みについても併せて積極的な推進を要望します。具体的には、質の高い人材確保のための人件費の保証が介護報酬でまかなわれること。労働環境、給与額、人件費比率の公表を義務付け、人材確保指針に明記されている国家公務員の福祉職俸給表など活用することなどです。

(6)准介護福祉士
介護福祉士制度の円滑な実施を図るために、准介護福祉士を早急に廃止とされるよう要望します。

(7)福祉人材確保指針
介護人材確保にかかる中期的戦略である福祉人材確保指針の必要な見直しを検討するよう要望します。

2.施設の運営基準の是正について
高齢者介護・障害者介護の現場において、専門能力による質の確保と効率化並びに施設職員全員の負担軽減のために介護福祉士が一定数以上配置されることが必要であり、運営基準のなかに介護福祉士の配置基準を明記することを提言します。

3.地域ケア会議について
第46回介護保険部会の議題2「地域包括ケアシステムの構築に向けて」の地域ケア会議については、すばらしい制度と評価しています。
より充実した制度にするには介護福祉士の参加は不可欠であり、地域ケア会議の構成員として参画するよう要望します。将来的には介護現場を統括する認定介護福祉士が構成員として参画することが望ましいと考えています。

4.施設サービス等について
前回の部会で特別養護老人ホームの入所要件を要介護3以上に限定する改革案について、要介護1・2でも「やむを得ない事情」がある場合は特例的に入所を認めることを提案されました。
ただし、市町村の関与が前提となっているため、各市町村で差異が出ないよう国が指針を早急に提示していただきたい。併せて特例以外の要介護1・2の低所得者対策を具現化すべきです。

5.生活支援サービスと介護予防給付の地域支援事業への移行について
① 完全に市町村にサービスが移管すれば地域においてサービスの格差が生まれ、介護保険の理念から外れることになります。生活支援と介護予防の観点からそのような懸念がないような仕組みにすべきです。
② 生活援助サービスは、利用者の自立した生活を支える必要なサービスで あり、今後、在宅での認知症高齢者や独居高齢者が増加することを想定すればますます重要になってくることから、地域支援事業に移行してもサービスに支障がないようにすべきです。
③ 2018年度完全移行時までに見直しされる事業費の上限見直しについても、当面は経過措置をもって機械的な抑制はしないよう推進すべきです。

6.地域包括支援センター機能の拡充と人員体制の充実について
地域包括支援センターが取り組む事業は年々増加し、果たす役割は膨大なものと思料されます。
しかしながらセンターの課題は多いことに加え、市町村の評価も低く、かつ、他の公的機関に比べ認知度も低くて専門職の確保が困難な現状とのことです。
地域の拠点となる地域包括支援センターの役割は重く、これらの課題を是正するシステムを構築することが必要と考えます。
具体的には、センター機能の拡充はもとより、確保が困難とされる専門職の人員・体制の充実を図るとともに生活支援サービスの充実の視点から介護福祉士の配置を要望します。