18日の社会保障審議会介護保険部会では、特別養護老人ホーム(特養)の入所者を要介護度が3以上の人に限定する案が厚生労働省から示された。要介護度が重い人へのケアの質向上や、特養の入所待機者の解消などを目的とした案だが、この日の会合では異論を唱える委員が続出した。
在宅で介護を受けながら特養への入所を待っている要介護4や5の人は、約6万7000人いるとされる。一方、2011年段階では特養の全入所者の12%が、軽度の要介護者(要介護1か2)で占められていた。
こうした状況を受け、厚労省は、特養について「在宅で生活することが困難な要介護者を支える施設としての機能に重点化を図るべき」と指摘。新たに入所する人については要介護度が3以上の人に限定すべきとした。既に特養を利用している人のうち、要介護度が3より軽い人については、「継続入所に配慮する」と提案。そのほか、特養の個室ユニット化を推進する方針は変更しないとしながらも、現在ある多床室における利用者のプライバシー保護にも配慮すべきと指摘した。
■「入所は要介護3以上に限定」に異論続出
厚労省の提案に対し、桝田和平委員(全国老人福祉施設協議会介護保険事業等経営委員会委員長)は、「特養における軽度要介護者の入所は、地域の事情によりセーフティネットとしての役割を果たすべく、相応の判断があって行われている」とし、入所者を要介護3以上の人に限定することに強く反対した。
内田千恵子委員(日本介護福祉士会副会長)も、「認知症の人で要介護1や2の人は多い」とし、特養の入所の基準は、要介護度の軽重ではなく、本人が入所を必要としているかどうかで判断すべきと指摘。勝田登志子委員(認知症の人と家族の会副代表理事)は、「現行でも入所基準があり、重度優先が実施されている。わざわざ『要介護3以上』と限定する必要はない」と述べた。一方、小林剛委員(全国健康保険協会理事長)や藤原忠彦委員(全国町村会長)は、厚労省の提案に理解を示した。
また、厚労省は所得が低く資産も少ない高齢者が安心して暮らせる住居を確保する方策として、全国で増加している空き家などを有効活用すべきと提案。有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅については、入居することでどのような医療・介護サービスが受けられるかなど、情報提供体制の充実を図る必要があるとした。(CBニュース)