厚生労働省は、8月29日、平成26年度予算概算要求の主要事項を公表した。(ケアマネジメントオンライン)

平成26年度の一般会計での要求総額は30兆5620億円で、25年度当初予算額より3.8%増加し、過去最大となった。
そのうち「安心で質の高い介護サービスの確保」のための要求金額は2兆7,246億円で、25年度当初予算の2兆5,742億円より1,504億円の増加となる。
内訳は介護保険制度の運営を柱に、認知症対策が中心だが、地域包括ケアシステムづくりに向けた新規の事業への予算配分が目を引く。それぞれの施策の要求額と内容は以下の通り。

1)認知症を有する人の暮らしを守るための施策の推進:25億円(25年度当初予算:23億円、以下同)
平成24年9月策定の「認知症施策推進5か年計画」の着実な実施を図り、全国の自治体で、認知症の人とその家族が安心して暮らしていける支援体制を計画的に整備する。

■認知症の早期診断・早期対応の体制整備
・かかりつけ医などの認知症対応力の向上のための研修の実施や、かかりつけ医に助言を行う認知症サポート医を養成する

■認知症初期集中支援チームの設置
認知症の早期診断や早期対応を行うため、認知症疾患医療センターの整備を図り、看護職員や作業療法士などからなる「認知症初期集中支援チーム」が初期支援を包括的・集中的に行い、自立生活のサポートを行うモデル事業を引き続き実施。

■認知症の人の地域での生活を支える医療・介護サービスの構築および日常生活支援の強化
・一般病院勤務の医療従事者向けの研修の実施
・一般病院・介護保険施設などで認知症対応力向上の推進
・認知症ケアに携わる多職種の協働研修の実施
・認知症高齢者グループホームなどでの在宅生活継続支援のための相談・支援の推進
・認知症地域支援推進員の配置の促進
・市町村の高齢者虐待防止対応の推進
・市民後見人の育成と活動への支援
・認知症の人の家族への支援の推進
・地域ケア会議の活用を推進

2)持続可能な介護保険制度の運営:2兆7,018億円(2兆5,540億円)
地域包括ケアシステムの実現に向け、「第5期介護保険事業計画」に基づく介護サービスの実施に必要な経費を確保して円滑な実施を図る。

3)地域での介護基盤の整備:57億円(51億円)
地域包括ケアシステムの実現に向け、高齢者が住み慣れた地域での在宅生活を継続することができるよう、定期巡回・随時対応サービス、複合型サービス事業所などを開設する際の経費や、都市型軽費老人ホーム等の整備に必要な経費り財政支援を行う。
養護老人ホームなどのプライバシーを確保するための環境の改善に必要な経費についても財政支援を行う。

4)介護・医療関連情報の「見える化」の推進:7,2億円 (新規)
各地方公共団体がそれぞれの地域の特性に合った地域包括ケアシステムを構築し、国民が適切な介護サービスを選択できるよう、有益な情報の共有=「見える化」のためのシステムの構築を推進する。

5)低所得高齢者などの住まい・生活支援の推進:20億円(新規)
低所得高齢者等が住み慣れた地域で安心して暮らせるよう、NPO 法人や社会福祉法人が実施する既存の空家を活用した低額の家賃の住まいの確保の支援や、見守り・日常的な生活相談などの取り組みを支援する。

6)生涯現役社会の実現に向けた環境整備:42億円(32億円)
高齢者が地域の中で生きがいや健康づくりができるように、NPO など民間団体と協働し、社会参加の場の開拓する取り組みに支援を行う。

7)地域づくりによる介護予防の推進:6,200万円(新規)
住民主体の介護予防を推進し、身近な通いの場に多くの高齢者が参加できるよう、都道府県と連携して市町村に対して研修や個別相談などの技術的支援を行う。

8)二次医療圏単位での病院・介護連携の推進:7,100万円(新規)
病院から介護支援専門員への高齢者の着実な引き継ぎを行えるよう、情報提供のためののルール作りと運用のため、管轄する都道府県に対し技術的な支援を行う。

9)訪問看護の供給体制の拡充:1,4億円(新規)
都道府県の介護保険事業支援計画策定を念頭に、在宅療養を望む要支援・要介護者に安定的なで効率的な訪問看護サービスの供給体制を拡充するため、訪問看護職員の人材確保、定着促進のための支援を行う。

10)福祉用具・介護ロボットの実用化の支援:1,8億円(8300万円)
福祉用具や介護ロボットの実用化を支援するため、介護現場における機器の有効性の評価手法の確立や、介護現場と開発現場のマッチング支援でモニター調査の円滑な実施を推進する。
また、実用性の高い介護ロボットの市場化を図るため、介護現場への試用機器の配置や機器を使用した援助技術の指導や講習を実施する。

11)地域包括ケアシステムの構築へ向けた取り組み・人材確保の推進:7,4億円(新規)
国民に、地域包括ケアシステム構築の必要性・重要性について普及啓発を行い、都道府県の介護人材確保の取り組みを支援する。

12)適切な介護サービス提供に向けた取り組みの支援:76億円(85億円)
介護支援専門員の資質向上を図るため、体系的な研修事業を行い、必要な知識・技術の習得を図る。