◇市町村 予算削減を危惧

 厚生労働省は28日、厚労相の諮問機関、社会保障審議会介護保険部会を開き、社会保障制度改革国民会議の提言を受けた介護保険改革に着手した。最大の焦点は介護の必要度が低い「要支援」向けサービスを市町村事業に移す案の具体化で、同案には「介護保険からの軽度者切り捨て」との批判もある。厚労省は、来年の通常国会に介護保険法改正案を提出し、2015年度から実施することを目指している。【山崎友記子、佐藤丈一】

 介護保険には身体の状態に応じた七つの認定区分があり、最軽度が「要支援1」でその次が「要支援2」。双方で150万人余が認定されており、ヘルパーによる家事援助、デイサービスなどを利用できる。給付費は約4500億円。

 だが、国が定める限度額内でサービスを使うことができ、給付費が膨らみがちとされる。このため市町村がサービスや基準、価格などを独自に決め提供することで、自治体のコントロールが利くようにする。ただし、民間の専門職が受け持っていたサービスをボランティアのものに変更することも可能で、識者からは「サービス水準が低下するのではないか」との指摘もある。

 現在約9・4兆円の介護給付費は、高齢化に伴い25年には21兆円程度に膨らむとみられている。市町村に移す要支援向け事業の財源は引き続き介護保険から充てられるものの、改革の主目的は給付費抑制だ。厚労省は同日の部会で「介護保険の中の制度。財源構成も変わらない」と理解を求めたが、ある政令市の担当者は「総枠の予算が維持されるかどうかは分からない」と懸念している。

 国民会議の報告書は「給付の重点化・効率化」を求めている。同部会の検討項目には、他にも▽一定所得以上の人の自己負担割合(現行1割)を2割に引き上げ▽特別養護老人ホームの入所者を中重度の人に限定▽施設入所者に食費などを補填(ほてん)する「補足給付」は、低所得でも貯金や土地などの資産があれば対象外--など「能力別の負担」につながる案が並ぶ。(毎日新聞)