厚生労働省は27日、「都市部の高齢化対策に関する検討会」(座長=大森彌・東大名誉教授)に、「これまでの議論を踏まえた論点整理」を提示した。空き家の有効活用やサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)に対する住所地特例の適用など、都市部の高齢化対策の具体案や検討課題が示されている。厚労省では、この内容に同日の検討会の議論を反映させ、報告書案を作成。次回の会合で提示する方針だ。


 厚労省が示した「これまでの議論を踏まえた論点整理」では、ヒアリングなどで浮き彫りになった都市部の「弱み」として、地価の高さに伴う施設整備率の低さや介護サービスを提供できる人材確保の難しさ、住民同士の支え合いの希薄さなどを挙げた。一方、「強み」としては、狭い地域内に商業・交通・物流などが発達し、多くのインフラが整っている点や、人的・物的資源と資金・資本が豊富な点、空き家や空き建物が増えている点などを挙げた。

 その上で、都市部の「強み」を生かした地域包括ケアシステム構築に向けた検討課題として、サ高住への住所地特例の適用や、低所得・低資産の高齢者向けの住居として空き家や空き建物を転用することなどが示された。また、介護保険事業計画は市町村が、高齢者居住安定確保計画は都道府県が、それぞれ策定している現状を問題視。「両計画を有機的に連携させ、整合性を図る必要がある」と提言している。

■東京での老人福祉圏域間の施設整備の調整も提示

 中でも東京23区については、他の都市部に比べて地価も高く、施設整備のための用地確保が非常に厳しい状況にある一方、交通網の発達に伴い、老人福祉圏域を超えた移動も容易と指摘。施設利用のニーズを単一の老人福祉圏域で受け止めるのが難しい場合は、複数の老人福祉圏域の間で、施設整備数の調整をすることを提言した。なお、老人福祉圏域間の施設整備の調整については、「特に東京都において対応が求められる問題」と位置付けている。

 この日の検討会では、サ高住への住所地特例の適用を疑問視する声が上がった。岡田輝彦委員(横浜市健康福祉局長)は、サ高住の整備が進まない背景に、利用者の流入に伴う介護給付費の増大を懸念する自治体の思惑があるとするなら、「(住所地特例の適用ではなく)国が自治体間の財政調整を行えば済む」と指摘。高橋紘士委員(国際医療福祉大大学院教授)も同様の意見を述べ、住所地特例の適用に疑問を呈した。(CBニュース)