政府の社会保障制度改革国民会議(会長・清家篤慶応義塾長)は2日、最終報告書案の各論部分を明らかにした。70~74歳の医療費窓口負担の1割から2割への早期引き上げなどを盛り込むなど、高齢者に新たな負担を求めたほか、高所得者の負担を増やした。一方で、少子化対策分野の改革案を示すことで医療・介護や年金分野よりも現役世代の環境整備を重視する姿勢を打ち出した。国民会議は5日に報告書を正式決定し、6日に安倍晋三首相に提出する。

 報告書案では医療・介護分野の高齢者の負担増について、現行1割に据え置いている70~74歳の医療費窓口負担を、新たに70歳になる人から段階的に本来の2割にすることを求めた。早ければ来年4月から実施される。

 高所得者に関しては、介護サービスの自己負担(現在1割)の引き上げ方針を明示。膨らみ続ける75歳以上の高齢者医療向け支援金について、高収入の大企業社員が加入する健康保険組合ほど負担が大きい「総報酬割」を全面導入する。国民健康保険の運営主体を現在の市町村から都道府県へ移行する。

 高額医療での自己負担を低く抑える「高額療養費制度」限度額を所得に応じて設定。負担は高所得者で増えるが、低所得者は軽減される。

 年金では、支給開始年齢引き上げについて「中長期的な課題」とした上で、検討作業を速やかに始めるよう求めた。介護保険では、介護を必要とする度合いが低い人向けのサービスは保険適用から外し、段階的に市町村事業へ移す。

 少子化対策では妊娠期から子育てを総合的に支援する拠点設置を提案。待機児童対策や、育児休業中の経済的支援の在り方の検討を進めるべきだとした。このほか、病院機能の再編と「かかりつけ医」の普及も盛り込んだ。

 一方、民主党が掲げてきた最低保障年金制度創設や後期高齢者医療制度の廃止は盛り込まなかった。(産経新聞)