全国老人福祉施設大会は2日目となる24日、6つのテーマで分科会を開いた。「利用者・家族に安心をつくる介護保険制度とは」の分科会に参加した厚生労働省老健局総務課の千田透介護保険指導室長は、特別養護老人ホーム(特養)などの介護保険施設は、専門性を生かし、地域に向けてサービスを積極的に展開すべきと指摘。また、社会福祉法人については、「生き残りをかけて低所得者支援や市民後見人の育成を行うことを標榜すべき」と訴えた。

 千田室長は進行する高齢化に伴い、65歳以上の人生に重点を置くライフモデルが普遍化することから、医療の基本方針は「絶対救命・絶対治癒から、生活の質を高め、人生を支えるための治療となる。その場所も、病院内からコミュニティでのケアに移行する」と予測。さら地域のコミュニティにおいて、住民の生活の質の向上に資なさい職種・サービスは淘汰される可能性もあると警鐘を鳴らした。

 また、胃ろうや透析、認知症への対応については、「医療と介護のサービスの狭間に落ち込んでおり、地域医療に頼らざるを得ない」と指摘。その上で、今後、認知症や胃ろう、ターミナルなどへの対応に重点を置く次世代施設を、新たなビジネスモデルとして構築する必要があると述べた。

■24時間訪問サービス「最大の課題は職員確保」

 引き続き実施された総合ディスカッションでは、千田室長や日本社会事業大の村川浩一教授、定期巡回・随時対応型訪問介護看護(24時間訪問サービス)を手掛ける射水万葉会(富山県射水市)の矢野恵三氏らが登壇した。矢野氏は、24時間訪問サービスは、利用者にとって「大変、良い制度」とした上で、最大の課題は「臨機応変に対応できる職員の確保」と指摘。また、利用者の確保の難しさも課題として挙げた。村川教授は、24時間訪問サービスを普及させるためにも、「例えば、事業を開始した年度に200万円、2年目に100万円といったような資金補助システムがあればいいのではないか」と提案した。

■「老衰にどこまで医療が関わるのか、考える時」-石飛氏

 分科会「科学的介護の実践に向けて」のシンポジウムでは、日本老年学会・日本老年医学会の大内尉義理事長や特養「芦花ホーム」(東京都世田谷区)の石飛幸三氏らが参加した。大内理事長は、今年6月に日本老年医学会が示した、終末期における胃ろうなどの人工的水分・栄養補給の中止や差し止めなどを判断するための指針について、「(指針は)革命的なことを言っているわけではない。みんなが思っていたこと。それをはっきりさせたことに意義がある」と述べた。また、石飛氏は「もう病院に死にに行く時代ではない」と言及。その上で、「老衰に対し、医療がどこまで関わるのか、改めて考える必要がある」と訴えた。(CBニュース)