10月10日、東京・虎ノ門で厚生労働省の「介護支援専門員の資質向上と今後のあり方に関する検討会」の第6回会合が開かれた。

当日は事務局から示された検討すべき課題、課題への対応の方向性(当日の配布資料はこちら )をもとに、前回とは打って変わって活発な議論が行われた。ここでは、「地域ケア会議」についての意見交換を紹介した1回目に続き、それ以外の議論をいくつか紹介する。

OJTによる研修のあり方
前回、藤井賢一郎氏(日本社会事業大学専門職大学院准教授)から、「インターンシップ」という表現で、ケアマネ資格取得前に現場で実践的研修を行ってはという提案があった。今回の資料にこの提案が載ってこなかったことから、藤井氏は、「実現可能性が低いということではずされたのかもしれないが」と苦笑しつつ、次のように述べた。

「一つには、資格・研修制度だけではどうも人が育たないということで、地域ケア会議を通して育てていこうという視点が入ってきた。もう一つには、非定型業務は日々の仕事の繰り返しの中で業務支援を通して身につけていくもの。それが1人ケアマネ事業所などではOJTができていないのではないかと懸念されている。だから初期の段階では、きちんとOJTでの研修をしてほしいということ。つまり、達成目標を定めて、それをクリアしたことを誰かがチェックする。そういう仕組みを半年あるいは1年いれると。そうしないと人が育っていかないと考えている」と、OJTのしくみの必要性について再度訴えた。

一方、堀田聰子氏(労働政策研究・研修機構研究員)は、システムとしてのOJTだけでなく、ケアマネ同士での学びを促進するOJTの必要性について言及した。「1人前になるまでの継続的OJTに加え、さらに広い意味での継続的OJTを考えたとき、一つには多職種での話し合いの場となる地域ケア会議がある。これはいわばシステムとしてのOJT。さらに、ケアマネ間でのスーパーバイズと、協会あるいは学会など、フラットなケアマネ・コミュニティの中での日常的な振り返りが必要だと思う。ただ後者については、国はあくまでも後方支援する立場。そうしたケアマネの資質向上のための方策の全体像を描いて、システムとしてのOJTとそうでないOJTとの関係が整理されるといいと思う」と述べた。

保険者機能の強化
「資料の検討課題を見ると、『必ずしも十分ではない』という表現がたくさんある。そもそも世の中のたいていのものは不十分であり、言ってみればケアマネより保険者の方がよっぽど不十分だ」と喝破したのは、小山秀夫氏(兵庫県立大学教授)。小山氏は、「現行法では、保険者にできることは現状で精一杯。保険者機能を強化するには、法改正をしないと無理」と言いきった。

一方、筒井孝子氏(国立保険医療科学院統括研究官)は、まず、「この検討会はケアマネジメント機能を向上させる方法論を検討する場であり、機能を担う個人の質を上げる方策ではなく、ケアマネジメント機能を高めるシステム化を進める方策を考える必要がある」と検討会の目的を改めて整理。

そして、「そのシステム化の方策として挙げられているのが地域ケア会議であり、これは保険者機能を高めるための一つのツールでもある。保険者主導で地域ケア会議を開催するならば、保険者にもトップから1400番目があるわけで、トップが和光市だとすれば末位にいる保険者をどうするのか。これまで検討されていない、保険者機能を強化する方策、地域ケア会議をシステム化していく方策をここで議論して、標準化できるものはしていくことが必要なのではないか」と、議論の方向性を明示する意見を述べた。

また、水村美穂子氏(東京都青梅市地域包括支援センターすえひろセンター長)は、「未熟なケアマネを地域ケア会議でフォローする仕組みはいいと思うが、そのためには保険者の教育が必要。3年ごとに異動する担当者に介護保険についての深い理解を求めることも、そもそも継続的に良好な関係を作ることも難しい現状がある。ケアマネジャー個人の資質向上と共に、システム作りという点では保険者教育は欠かせない」と訴えた。

ケアマネは制度内スペシャリスト
議論の過程で、藤井氏から「ケアマネは専門職、プロフェッショナルだと思っているが」という言葉が出たのを受けて、小山氏が言ったのは、「ケアマネは制度内スペシャリストであって、プロフェッショナルではない」という意見。小山氏は、「これだけいろいろ言われてしまうのは、要するにプロではないから」と、またもバッサリ。そして、「プロになってほしいと期待するにしても、プロフェッショナルの専門的な技術体系の細部を法律で規定するのはおかしい。そんなことを議論しても仕方がない」と、声を大にして言い放った。


この日の議論を振り返ると、「介護支援専門員の資質向上と今後のあり方」の検討会であったはずが、筒井氏から「個人のレベルアップを検討する場ではない」とされ、保険者機能を強化するには「現状では無理。法改正が必要」と小山氏に言われ、地域ケア会議の制度化については「義務化しても形骸化するだけ」と野中氏から切って捨てられるなど、示された検討課題に対して厳しい意見が多数飛んだ。それでも地域ケア会議についての様々な意見の中から、その是非はともかく、これを活用しながら保険者機能の強化とケアマネのレベルアップを図っていくというような方向性が、やや見えた検討会であった。(ケアマネジメントオンライン)