厚生労働省は、9月7日、第92回社会保障審議会介護給付費分科会を開催した。この日の議題は、東日本大震災における特例措置について、その他。(ケアマネジメントオンライン)

東日本大震災では、被災した要介護高齢者に十分なサービス提供ができないことを懸念し、特例省令として、以下の内容の特別措置を実施していた。

今回は、小宮山洋子厚生労働大臣より、この特例省令の期限である9月30日以降、さらに来年3月末まで延長する改正案の諮問を受け、この案についての意見をとりまとめ、答申するものだった。

【特例省令の内容】
東日本大震災への対応として、基準該当居宅サービスに該当する訪問看護サービスを実施する場合に事業者が配置すべき保健師、看護師又は准看護師の員数を常勤で1以上に緩和する特例措置を平成23年4月22日より平成24年2月29日までの間に限り実施。さらに、一部の市町村において特例看護サービスの提供が平成24年2月より開始されたため、対象区域を、岩手県、宮城県及び福島県内の市町村に限定した上で、平成24年9月30日まで延長。


つまり、訪問看護ステーションの人員配置を緩和し、1人訪問看護ステーションでも「特例看護サービス」として認めるというものだった。

特例看護サービスの申請状況は、8月31日時点で被災地12市町村等に対し、17件・12事業者(人)の相談および申請があり、このうち5件が受理されている。受理された5件は以下のとおり。

・岩手県一関市(サービス提供中)
・福島県福島市および飯館村(サービスは2月末で終了)
・福島県南相馬市・浪江町(サービス提供なし)

実際にサービス提供を受けた利用者は6名、8月末時点では3名が提供を受けている。また、9月30日以降の継続を希望した市町村は、福島県相馬市・南相馬市の2市となっている。

しかし、継続を希望する2市では、対象となる地域でいずれも複数のステーションが運営中であり、新規の受け入れも可能との報告があった。

これらの報告を受け、特例省令の延長を認めるべきか否かの意見を委員に問うた。
真っ先に意見を述べたのは、認知症の人と家族の会副代表理事の勝田登志子氏。 
勝田氏は「被災地の利用者にとって、いつでも看護師がそばにいるという安心感を得られることは重要」とし、特例省令の継続を求めた。
しかし、ほかの委員のほとんどは、被災地の状況も落ち着いてきており、特例看護サービスの役割は果たした、経営が不安定な状況で、一人ナースで急変時に対応できるのか、などの否定的な声が多かった。

特に、24時間365日対応であるべき訪問看護ステーションを、1人で運営することへの懸念の声は多く、ある委員は「看護師は病気しないんですか? 風邪ひいたりしないんですかね?」と、かなり強い調子で、1人開業のリスクを訴えた。

また、すでにサービス提供は終了しているが、福島県福島市で特例看護サービスを提供していた事業所は、月間の営業日がわずか5日であり(他事業所はいずれも21~22日営業/月)、これに対し、「どういう状況なのか、(厚生労働省の)事務局は、把握しているのか?」と委員が問い詰める場面も。

常には穏やかな大森 彌 社会保障審議会介護給付費分科会長(東京大学名誉教授)も、「厚労省の担当者は、現場に行って(現状を)見てこられるといい」と、状況を十分に把握していないかのような事務局に苛立ち、釘を刺した。

しかし、現時点において利用者がいること、利用者はいないが自治体から継続を求める声が上がっていることを踏まえ、一人開業ナースの特例省令は、来年3月末まで再延長することを決め、同分科会として小宮山厚労相に答申した。

この日の議題は、このほかに以下の報告事項が挙げられた。
CMOでは、これらについても順次ニュースで紹介するほか、資料が公開され次第、ダウンロード公開する予定。

・東日本大震災に係る認定の有効期間の特例措置について
・介護保険サービスに関する消費税の取扱い等に係る検討の進め方について(案)
・消費税の仕組みについて →ニュースはこちら  
・「認知症高齢者の日常生活自立度」II以上の高齢者数について
・「認知症施策推進5カ年計画(オレンジプラン)」(平成25年度~29年度までの計画)
・(上記の詳細として)今後の認知症施策の方向性、予算など
・第5期市町村介護保険事業計画の策定過程等に係るアンケート調査結果について
・キャリア段位制度パンフレット「平成24年度から介護プロフェッショナルのキャリア段位制度が始まります」