8月29日、東京・虎ノ門で厚生労働省の「介護支援専門員の資質向上と今後のあり方に関する検討会」の第5回会合が開かれた。挙げられた課題をどのように検討していくかについての意見交換では、議論が迷走。焦点が絞れない状態が続いた。

そんな中、藤井賢一郎氏(日本社会事業大学専門職大学院准教授)からは「自立支援の概念についての合意が必要」、筒井孝子氏(国立保健医療科学院統括研究官)からは「ケアマネの業務範囲と支援対象についての合意を得ておくべきではないか」という指摘があったのは前回伝えたとおり。

これに続き、堀田聰子氏(労働政策研究・研修機構研究員)からは、3点に絞り込んだ意見が示された。1点目は、中村春基氏(日本作業療法士協会会長)や藤井氏も指摘していた自立支援の概念について。自立支援型ケアマネジメントには、ケアプラン作成だけでなく、情報提供、セルフマネジメント支援、意思決定支援などもある。そのすべてをケアマネに委ねるのは無理があり、どこをコアとするのかの合意は必要、と指摘した。次に、保険者機能の強化について、堀田氏はこの検討会で保険者に期待される役割や地域ケア会議の機能の方向性を示すことにより、モデル作りが進めていけるといいのではないか、と訴えた。そして最後に、ケアカンファレンスや地域ケア会議がコアになるとしても、日常的にケアマネ同士がナレッジを共有し、ケアマネジメントの質を上げていく仕組み作りも必要であることを、3点目として指摘した。

また東内京一氏からは、「ケアマネは属地性が高い業務。地域密着型サービスとしてはどうか」、あるいは、「地域ケア会議を保険者機能として法定化、義務化してはどうか。それにより、地域密着と中立公正は担保できる」、「介護保険法第2条(自立支援)、第4条(利用者自身の能力維持の努力義務)に謳われている理念を国レベルで国民に周知徹底すべき」といった具体的提案が示された。

さらに、地域ケア会議について東内氏は、「改善可能性が高いにもかかわらずサービスを拒否する利用者はたくさんいる。利用者本位、自己決定が誤った形で重視され、プロのアセスメントが通らない、あるいは十分に提案できてないことで合意形成が図れない状況がある。地域ケア会議というのは、そういうケース、ケアマネを支援していく場だ」と明確に定義した。

自立支援と地域ケア会議については、他の構成員からも「自立支援の概念は混乱しているから明確化が必要」(水村美穂子氏・東京都青梅市地域包括支援センターすえひろセンター長)、「地域ケア会議は制度的に明確なインセンティブを付けないとやらないのでは?」(藤井氏)などの意見が示された。

ケアマネを地域密着型にしては、という東内氏の提案に対しては、藤井氏から「地域密着型にするかどうかは別としても、事業所の指定を行う権限は保険者に持たせた方が、しっかりとケアマネを支援していくことができるのではないか」との声が上がった。

野中猛氏(日本福祉大学教授)からは、「制度と技術を分けることが大切。ケアマネが動きやすいように制度を作るのが厚生労働省の役割。ケアマネがどう振る舞うかまで、厚生労働省が決める必要はない。ケアマネの自律性を担保するならもう少し自律性を上げる必要がある。そこで、自律性を上げるためにはどのような前提条件や、試験、研修が必要かという議論に集中した方がいい」との意見が示された。野中氏はさらに、地域ケア会議について、「現場はやり方がうまくない。義務化してもただ形式的にやるだけになってしまう。だからやり方を教える仕組みを作ることが大切だ」と訴えた。

このように後半はやや建設的な意見も見られたが、全般に議論は低調。最後は意見が出ず、初めて予定時刻の前に終了となった。今後は、事務局にもう少し焦点を絞った議論ができるような枠組作りを期待したい。次回の開催は10月10日の予定。(ケアマネジメントオンライン)