6月26日、神奈川県横浜市で神奈川在宅緩和医療研究会が開催された。訪問介護、訪問看護の立場からの発表について伝えた前回に続き、今回は居宅介護支援の立場からの発表と、その後の質疑応答について報告する。

独立型居宅介護支援事業所・(有)ケアプランナーみどりの管理者である原田保氏は、まず「そもそもケアマネジャーとは何か」というところから説き起こした。ケアマネジャーの役割とは、利用者・家族のニーズを社会資源と結びつけることだ、と原田氏。そして、「社会資源=介護サービスではない」という視点こそがケアマネジャーの専門性であり、ケアマネジャー自身がまず社会資源でなくてはならないとの考えを示した。

また原田氏は、ケアマネジャーが利用者支援において重視すべきポイントはケースによって異なるとして、自身が考案し、重視するポイントによって分類した4つのタイプを紹介。比較的安定していてケアプランを組めば機能する「ケアプラン重視型」、チームを組んで支援するため地域資源の情報量が求められる「コーディネイト重視型」、ターミナルケアなど予後予測がカギになる「マネジメント重視型」、多問題ケースなど他機関・他制度との連携が必要な「社会性重視型」の4タイプがあると語った。

しかし、ケアマネジャーが重視していることと、利用者がケアマネジャーに求めていることにはギャップがあるのがしばしば。まずは利用者側の求めに応じて動き、徐々にイニシアティブを取っていく姿勢が必要だと伝えた。

また原田氏は、ケアマネジャーとは、様々な価値観、人生観を持って自宅という自分の城で自由に暮らす人々を相手に、その人たちの人生と対話するのが仕事だ、とも。利用者が人生の歩みの中で身につけてきたそれぞれの価値観は、時には社会通念や一般常識と相容れないこともある。それだけに、支援のイニシアティブは決して簡単に取れるものではないこと、そしてまた、たまたま介護というきっかけで関わることになった利用者への支援は介護保険制度の中で納まるとは限らないことなど、ケアマネジャーとして必要な心構えに通じる自身の考えを語った。

だからこそケアマネジャーは、利用者が在宅生活自体、成り立たない状況にあれば、介護保険制度の枠にとらわれず、まずその生活基盤を整えるところから支援していくべきだ、と原田氏。発表を通して原田氏は、ケアマネジャーが支えているのは「利用者の在宅生活そのもの」だという、ケアマネジャーの本質的な役割論を示した。

原田氏はこのほか、家族から介護サービスを使うよう本人を説得してほしいと頼まれたり、急なサービス調整を急かされたり、病院の相談員から施設探しを依頼されたり、民生委員から近隣トラブルの相談を受けたりといった、ケアマネジャーの様々な困りごとについても紹介。そして実は、ケアマネジャーの守備範囲が法的に定められておらず、介護支援専門員自身もよくわからないことも大きな困りごとだと語った。

そして最後に、利用者の求めに応じて奔走するものの、社会的評価は低く、社内では赤字部門と後ろ指をさされ、自分の生活レベルも上がらず、国の審議会では様々に糾弾・罵倒されるケアマネジャーの自分っていったい…とブルーな気持ちになる、と明るく語って参加者の笑いを誘い、話を締めくくった。

このあとの質疑応答では、医師からの要望に関するケアマネジャーからの質問に対し、参加者の医師から非常にストレートな思いを含んだ応答があり、会場が緊迫する場面があった。しかし、そのやり取りをきっかけに、この会においては自由な発言を大切にしつつ、異なる職種が互いに理解し、尊重し合うことで顔の見える関係を作っていきたいといった発言が続き、閉会となった。多職種が集う会ならではのやりとりであり、率直な意見交換の場であることが示された質疑応答であった。

次回の神奈川在宅緩和医療研究会は、7月24日(火)に在宅医療に積極的に取り組む医師を講師に招き、「これからの在宅緩和医療」というテーマで開催される。

*今回の神奈川在宅緩和医療研究会は、神奈川在宅緩和医療研究会、神奈川区ケアマネクラブ、在宅医ネットよこはま、田辺三菱製薬(株)による共催で開催された。(ケアマネジメントオンライン)