6月26日、神奈川県横浜市で神奈川在宅緩和医療研究会が開催された。医師、看護師、介護士、ケアマネジャーなどが参加する研究会である。この日は多職種が互いに理解し合うために、「在宅現場での各職種の現状~みんな、こんなことで困っています~」をテーマに、訪問介護、訪問看護、居宅介護支援の3つの立場からの発表が行われた。2回に分けて報告する。

訪問介護の立場から発表を行ったのは、(有)ステップコーポレーションの日高淳氏。訪問介護事業所と居宅介護支援事業所の管理者を務める日髙氏は、「ケアマネジャーのモニタリングは月1回。医師の往診は週1回。毎日のように訪問するヘルパーは、誰よりも利用者について多くを知っている情報源」と切り出した。

利用者は気心が知れたヘルパーに、時には主治医やケアマネジャーに言えない本音を漏らすこともある。また日々の支援の中で、ヘルパーが利用者の病気や虐待の徴候に気づくこともある。そういった、利用者の身体や生活を細やかに見ているヘルパーだからこそ果たせる役割の重要性を理解し、認めてほしい、と日髙氏はまず訴えた。

介護保険でヘルパーが提供できるサービスには規定がある。しかし、利用者が好むのは介護保険で認められていないサービスも引き受けてくれるヘルパーだというのが現実。また困ったことに、今もヘルパーを家政婦扱いする利用者は多く、利用者や家族ができることもあえてやらず、訪問したヘルパーに一気にやらせる利用者もいると、日髙氏はいう。ヘルパーの困りごとは利用者の問題だけではない。生活保護世帯など経済困窮者への対応、離職率の上昇やヘルパーの高齢化などによる人員不足など、問題は多々ある。

日髙氏はまた、ケアマネジャーに対する要望も示した。単位数ではなくサービス内容を見てほしい。月1回のモニタリング時の状況や利用者の言い分だけで判断を下さないでほしい。急を要するサービス追加変更について「聞いていない!」と怒らず事情に耳を傾けてほしい。ケアマネジャーでもある日髙氏があえて訴えたこれらの要望には、思い当たるケアマネジャーも多いのではないか。

続いて訪問看護の立場から、大口訪問看護ステーション・大口療養通所介護センター管理者の藤田なぎさ氏が発表を行った。藤田氏はまず、「在宅生活を支えているのは介護士だと言われがちだが、実は生命維持があってこその在宅生活。健康管理や医療ケアの継続によってそれを下支えしているのは、訪問看護師ではないか」と投げかけた。そこには訪問看護が担っている役割の重要性に比して、注目度が今ひとつ高まらないことへの嘆きが含まれている。

藤田氏からは具体的な困りごとも挙げられた。退院患者についての情報が病院から直接来ない、ケアマネジャー通しで来た訪問看護の依頼は、「詳しいことは医者に聞いて」と言われることが多いなど、訪問看護師には患者の状態がつかみにくい、というのである。

困りごとは医療職同士の間でもしばしば起こる。「それは医者の仕事」と自分の仕事を線引きして人任せにする訪問看護師。訪問看護師に丸投げにしておいて、看護師がやったことには「越権行為」と言う在宅医。「何かあったらいつでも来てください」と言うのに、行けば「なぜ来たのか」という在宅への関心が低い勤務医。こうした困りごとの中で、訪問看護師は日々奮闘しているのだと藤田氏は訴えた。

藤田氏はまた、訪問看護師と連携を取る際には具体的な医療情報が欲しい、との要望も語った。たとえば「心不全」とは、心臓の状態を表す「症状」である。連携の際にはこうした症状だけでなく、心臓の機能、低栄養、肝機能障害など、その症状に至る原因となった病態も併せて伝えてほしい、というのだ。

藤田氏はさらに、服薬管理やじょくそう・創傷ケア、カテーテルケアなどにおいて必要な情報、見るべきポイント等についても紹介。「介護士は医療の知識を高めるより、よりよい情報をやり取りできるよう、情報の把握力と伝達力を高めることが大切」との考えを示した。訪問看護との連携の際に必要な具体的な医療情報も含め、介護士に「よりよい情報」について意識してほしいという藤田氏の思いがこめられた発表であった。(ケアマネジメントオンライン)