今年4月に導入された定期巡回・随時対応型訪問介護看護(24時間訪問サービス)や複合型サービスを実施する意向がある訪問看護事業所は、全事業所の1割強にとどまることが14日までに、全国訪問看護事業協会の調査で明らかになった。看護師不足などが影響しているとみられるが、関係者の間からは、このままでは2012年度介護報酬改定の基本方針に掲げられた「地域包括ケアシステム」のコンセプトそのものが揺るぎかねないとの声も上がっている。

 24時間訪問サービスは、訪問介護と訪問看護の両サービスを、日中・夜間を通じて定期巡回訪問と随時の対応によって提供する。また、複合型サービスは、小規模多機能型居宅介護と訪問看護のサービスを一体的に提供するもので、いずれも看護の関与が不可欠。

 全国訪問看護事業協会は、新サービスの実施状況について3681か所の訪問看護事業所を対象に、5月11日から28日にかけてアンケート調査を実施。1981か所から有効回答を得た。
 このうち、24時間訪問サービスの実施状況は、「実施する意向はない」が52.4%で最も多く、以下は「まだ考えていない」(33.7%)、「実施したいと考えているが具体化していない」(10.4%)、「実施する計画がある」(2.2%)、「実施している」(1.0%)と続いた。実施しているか実施する意向がある事業所(「実施している」「実施する計画がある」「実施したいと考えているが具体化していない」の合計)は、全体の13.6%だった。

 複合型サービスの実施状況では、「実施する意向はない」が46.8%で最も多く、以下は「まだ考えていない」(38.6%)、「実施したいと考えているが具体化していない」(9.2%)、「実施する計画がある」(2.0%)の順となった。「実施している」事業所はゼロで、実施する意向がある事業所は全体の11.2%だった。

 新サービスに取り組む意向がある訪問看護事業所が1割強にとどまっていることについて、全国訪問看護事業協会では、「大きな要因として、看護師確保の難しさとサービス運営に関する情報の不足が挙げられる。特に、利用者を受け入れる施設が必要な複合型サービスについては、費用がかさむことも影響しているのではないか」としている。

淑徳大の結城康博准教授の話
「いずれのサービスも、このままでは十分に機能できない。しかも、いずれも地域包括ケアシステムの中で重要な役割を担っているだけに、このままでは、地域包括ケアシステムのコンセプトそのものが揺るぎかねない。今後、少なくとも全事業所の3-4割が参加するくらいの状況までもっていく必要があるのではないか」(CBニュース)