認知症の人と家族の会は、「認知症の人と家族の暮らしに関するアンケート」調査を実施した結果をホームページで公開した。

同調査は、10年前に比べ、男性介護者の増加や家族形態などの変化、介護保険制度の創設により、介護サービス利用者の増加がみられるにもかかわらず、介護者が抱える「気が休まらない」「自分の時間が持てない」という悩みは依然として大きな問題であることから、家族の悩みの詳細を調べ、介護家族の立場から見た家族支援のあり方についての詳細を明らかにすることを目的に実施された。

回答を寄せたのは介護中の家族557人で、その割合は、実母を介護している人が27.2%、夫27.1%、妻19.2%、姑15.5%。診断名の7割近くがアルツハイマー型認知症で、介護度では要介護5が3割近くを占めた。介護者の介護歴は平均6.7年で、5~9年が約4割で最も多かった。

介護負担に関する質問では、「腰や膝などに痛みがある」人が約6割、「意欲が出ないことがよくある」と「時々ある」と答えた人が合わせて8割を超えた。また、「優しくできない自分に嫌悪感を感じる」という人も約8割いた。

「家族が認知症になってから生活のしづらさの変化」については、ほぼ全員が感じており、「かなり増えた」が6割以上、「少し増えた」が3割以上という結果だった。理由としては複数回答で、「ストレスや疲労感が増した」が76.7%とトップで、「自由に使える時間が少なくなった」(51.7%)、「時間のやりくりが難しくなった」(45.2%)、「家事時間が増加した」(44.2%)、「睡眠時間が減った」(42.9%)、「支出が増えた」(39.0%)が上位を占めた。

さらに、気持ちが「つらい、苦しい、悲しい」と感じるのはどんなことかを自由記述してもらったところ、以下のような思いが寄せられた。

■本人の病状や症状から感じる辛さ、悲しさなど
コミュニケーションがうまく取れないとき。話が通じないとき。気持ちが通じないとき。嫉妬・被害妄想・物とられ妄想で本人に怒鳴られるとき。本人ができないことが新たに出ていたとき。症状への接し方がわからないとき。

■顔後をすること自体から生じる辛さ
夜中の世話で十分に睡眠がとれない、排泄の世話、本人が抵抗するのに排泄ケアをしなければならないとき。いつも気になり気持ちが自由になれない、自分が疲れているときや病気のとき。

■介護者個々の条件により感じ方が異なる辛さ
介護を担うのが自分ひとりという孤立感、本人と二人暮らしの場合は問題が起きた時に相談でいる人がいないとき。本人に優しくできず自己嫌悪に陥る、病気とわかっていながらもつい怒鳴ってしまったときが情けないとき。本人の以前との落差に不憫さを感じる、将来への不安を感じるとき。

■環境によって生じる辛さ
地域や家庭との関係が期待はずれで、介護を継続する中で家族や周囲の反応や態度に孤立感や孤独感を抱き失望するとき。本人への差別・偏見を周囲の態度や言動から感じることで憤りを感じ、落ち込むとき、専門職との関係も含めてサービスが不十分さや不満さお感じ、サービスを利用すること自体への不安や疑問を感じるとき。制度上の制限により、現在の状況が脅かされるかもしれないという不安や、介護のない労働者と同じように働く条件が得られない苦しさなどを感じるとき。

また、介護して得られる喜びや充足感を尋ねたところ、本人が穏やかで体調がよいときは、気が休まったり介護をしていてよかったと思えることがわかった。具体的に「気が休まるとき」はいつかの問いには(自由回答)、「デイサービスやショートステイを利用して本人がいないとき」が最多。半面、「離れていても心配で心が安まることがない」という声も寄せられた。

これらの調査から、「家族は本人とのかかわりはもちろん、それ以外の辛さや苦しさ・悲しさを介護の長い経過の中で感じ、不安や絶望を抱えるという複雑な諸相が明らかになった」「制度としての専門職のケアは、家族が充足感を持てるようなケアを行うことが望まれている」「家族支援における専門職のケアは、安心して気兼ねなく使える制度として、質を高めなければならない」「家族支援は、単に介護のしやすさや物理的な利便性だけでなく、介護する家族の歴史や生き様が生かされる支援として機能することが望まれる」と分析し、提案している。(ケアマネジメントオンライン)

◎報告書