5月31日に開催された「介護支援専門員の資質向上と今後のあり方に関する検討会」の第3回会合。今回は日本介護支援専門員協会会長・木村隆次氏のプレゼンテーションの内容を紹介する。

木村氏は、このプレゼンに先立ち、協会ホームページで、ケアマネジャーをめぐる課題、養成カリキュラムや研修体系、試験、ケアマネジャー資格のあり方について、協会会員のケアマネジャーから広く意見を求めるアンケートを行ったという。2週間強の間に寄せられた回答は303件。その回答も踏まえ、この日のプレゼンに臨んだ。

まず、ケアマネジャーとして求められる基本的資質として、木村氏は、介護支援専門員としての心構え(価値と倫理)、介護保険制度と周辺制度の熟知、利用者・患者本位の視点、対人援助能力(コミュニケーションスキル含む)、多職種協働(医療と介護の連携含む)、基礎的な科学力(分析力・予後予測力等)など、12項目を提示し、中でも基礎的な科学力が不足していると述べた。

また、ケアマネジャーの資格と業務について、現状の都道府県知事の任用資格ではなく国家資格化し、介護・医療・保険・障害制度利用者に対して横断的にケアマネジメントが行えるケアマネジャーにしていきたいと訴えた。そして、そのための養成課程として、在宅、施設各3か月に及ぶ実務実習を含む約1800時間をかけた4年制大学での養成を推奨。国家資格取得後、1年間、保険を使わない助手的な仕事を担当するインターン期間を設けるという提案と、現職者を国家資格に移行させるシステムについての提案を行った。

また、事業所の独立については、単に併設サービスを持たないということだけでなく、経済的、構造的、機能的独立を果たしている必要があると指摘。ケアマネジャーを板挟みから解放するには、事業所を独立させることが不可欠だと訴えた。そして、政策誘導で6年後にはすべての事業所を、主任ケアマネジャー1人を含む常勤3人以上を配置した独立事業所に転換したいという希望を述べた。

前回の検討会で質の担保の上で何らかの対応が必要だとの指摘があった1人ケアマネジャー等の小規模事業所については、事業所同士の連携の義務化を提案。ケアマネジャーの入院等、不測の事態にも対応できるシステム作りを導入したいと述べた。

その後、施設ケアマネジャーと相談員の職域等についての話があり、最後にケアマネジャーをめぐる課題として、アンケート結果を中心に「国としてケアマネジメント学(学問体系)を確立する」「介護報酬は維持・改善の度合いを反映する仕組みになっていない」「インフォーマルサービスを含めたケアマネジメントを評価する」等、12項目を挙げて発表を終えた。

このあとの議論の冒頭、田中座長が「これはアンケートの回答をまとめたもので、協会としての意見ではないのか」との質問を発し、「国としてケアマネジメント学を確立する、という表現には非常に違和感がある」と指摘していた。もちろん、プレゼン内容は協会としての意見。しかし提案の根拠はほとんど示されず、また、検討会の主体であるべき職能団体の代表にもかかわらず、すでに繰り返されている現状の課題を挙げるだけで、それを主体的に解決していこうという姿勢はまったく感じられなかった。田中氏が思わず尋ねたのはそのためであったと思われる。充実していた他の構成員のプレゼンテーションとの差が際だったプレゼンテーションであった。(ケアマネジメントオンライン)