シンポジウム「認知症の人に精神老健はいらない」(主催=介護の社会化を進める1万人市民委員会2010)が30日、東京都内で開かれ、与野党の国会議員が認知症ケアの在るべき姿を中心に意見交換した。出席議員からは、認知症の人を地域で支援する体制の重要性を指摘する声が相次いだ。

 民主党の山崎摩耶衆院議員は、周辺症状のある認知症の人への対応について、「(症状が)手に負えないときは精神科(病院)に1か月程度入院し、改善したら自宅に帰ることは可能」と指摘し、「『収容』よりも、地域でどう受け皿を作るかが重要」と訴えた。また、「地域でのケアサービスが少なく、家族をサポートし切れていない」と述べ、介護者支援の必要性も強調した。

 公明党の渡辺孝男参院議員は、「認知症の人をすぐ、長期間入院させるのは問題」とした上で、「地域で見てあげる形がふさわしい」と指摘。認知症の人が地域で生活するため、インフラの整備やケア人材の確保、市民に対する啓発などが必要と主張した。認知症の人への医師や看護師らによる訪問支援の必要性も訴えた。

■「介護保険の創設、間違いだった」―自民・阿部議員
 一方、自民党の阿部俊子衆院議員は、認知症施策をめぐる問題点の一つとして「厚生労働省の縦割り」を挙げ、「介護保険と医療保険(の報酬改定)をばらばらにやっている意味が全く分からない」と指摘。その上で、「介護保険の創設そのものが間違いだった」との認識を示した。また、後期高齢者医療制度についても、「(制度を)縦切りにしていくのは、非常に患者にとって良くない」と述べた。

■1万人市民委、精神型老健に反対姿勢
 シンポジウムでは、1万人市民委員会政策委員の池田省三氏(地域政策ネットワーク研究主幹)が、日本精神科病院協会(日精協)が打ち出している「介護精神型老人保健施設」(精神型老健)構想について、「対象が統合失調症であれ、認知症であれ、新しい類型のベッドをつくるべきではない」とけん制。「(精神型老健で)認知症が対象でないとされている点は結構だが、現実がそう動くかは疑問」とも述べた。
 精神科医の上野秀樹氏(海上寮診療所副院長)は、「障害がある人を地域に移行させる、という世界の流れに大きく反するものになる」と批判。また、「精神科病院の単なる看板の付け替えに終わる可能性が高い」とも指摘した。

 精神型老健は、日精協が検討を進めている「精神医療の将来ビジョン」の一環。精神症状の程度は重度ではないものの、生活上の介護や支援が必要な高齢の精神障害者が生活する施設で、日精協では既存病棟の転換による整備を提案している。(CBニュース)