5月11日、東京・芝大門で「地域包括支援システムの将来」と題した日赤振興会第26回講習会が開催された。講習会は、前半が厚生労働省老健局振興課課長・川又竹男氏、全国社会福祉施設経営者協議会常任協議員・廣江研氏の講演、後半が「地域包括支援センターの経営戦略」と題したシンポジウムという内容だった。ここでは前半の講演について報告する。

「地域包括ケアの実現に向けて」と題した講演を行った川又氏。地域包括ケアを考える材料として、まず震災への対応から介護保険の成果と課題を振り返った。成果としては、ケアマネジャーが利用者一人ひとりの所在を確認してくれたこと、介護のベースとなる拠点として施設が機能したことなどを挙げた。

一方で課題として、介護保険という枠組があったために、それにとらわれて緊急時も現場判断での柔軟な対応が取りにくかったこと、医師のように提供できる支援が明確な職種と違い、介護職の場合は提供する支援の明確なイメージを持たずに外部から駆け付けても短期的な支援を提供しにくいこと、同じことを異なる支援者が繰り返し被災者に尋ねることになった情報共有の不備などを挙げ、地域包括ケアにおける情報共有と多職種協働の大切さを訴えた。

さらに、介護保険制度では何かとお金の話になりがちだが、システムをどう作っていくかが大切であることを強調。地域ケア会議で他職種からアドバイスを受けながらケアのあり方を考えていくなど、包括を中心とした医療と介護の連携を目指したいと訴えた。また、新しく始まった定期巡回・随時対応サービスについては、在宅でのケアはチャレンジではあるが、ぜひ良いビジネスモデルを作ってもらってそれを普及させていきたいと意気込みを語った。

続いて、廣江氏は「地域包括支援センターの経営」と題して講演。まず、これからの介護保険制度を考えていくには、過去の改正の流れがどうなっているかの検証が大切であると指摘した。審議報告を読むなど、自分なりに制度改正の流れを理解することが必要だとのこと。

そして、地域で必要とされていることを手がけていけば成果は出る、これまでもそうして新しい試みが制度化されていると述べ、いいもの、新しいものに挑戦していく姿勢の大切さを訴えた。その上で、新しい試みとその成果について、具体的な数字をエビデンスとして示しながら、厚生労働省に報酬を付けてほしいと訴えていく姿勢も必要だと述べた。

さらには、地域包括ケアシステムとは、高齢者だけでなく児童や障害者なども含めた地域全体の生活のコーディネイトを目指していくべきであり、それは地域性を見ながら進めていくことが大切だと訴えた。(ケアマネジメントオンライン)