公益社団法人全国老人福祉施設協議会(老施協)および特定非営利活動法人日本介護支援協会は、4月18日・19日の両日、都内のホテルにおいて「平成24年度トップセミナー」を開催した。

今年度は介護保険改定の年、そして6年に1度の診療報酬との同時改定の年でもある。そのためか、総合テーマは「『地域包括ケア』が、再現なき消費増税・負担増を招く!」という、少々刺激的なものだった。

最初に、老施協会長の中田清氏が情勢報告として「介護保険制度改正・報酬改定と全国老施協の取り組み」について解説。国が推進する地域包括ケアシステム(施設から在宅へ)の問題点を挙げ、老施協として「施設も在宅も」に取り組むことを強調した。

次いで、政治評論家の屋山太郎氏、元外務官僚で文筆家の佐藤優氏の講演の後、シンポジウム「徹底討論!施設復権はあるか?」が行われた。シンポジストは、村川浩一氏(日本社会事業大学教授)、樋口恵子氏(東京家政大学名誉教授)、千葉正展氏(独立行政法人福祉医療機構経営支援室経営企画課課長)の3人。
それぞれ研究者の立場、利用者の立場、社会福祉法人の公益性や経営状況を分析する立場から持論を述べた。

3人のシンポジストが口々に憂いていたのは、今後のわが国の人口構成比を見ると一目瞭然のように、高齢者ばかりが増えて、介護の担い手がいなくなるという暗い予測だった。保険料はさらに高騰し、晩婚、少子化、平均寿命の進捗などで、「一人っ子同士の世帯では4人の親の介護が現実となる。これを私は“同時多発介護”と呼んでいます」(樋口氏)など、超高齢化と高齢者人口の伸びは、要介護人口の伸びとも比例するため、とても在宅でのみ受け入れられるものではないと指摘した。


休憩を挟み、この日の締めくくりは、老施協常任顧問で参議院議員、日本介護支援協会会長の中村博彦氏による基調講演が行われた。
今回の改定で新たに導入された「地域包括ケアシステム」は、地域丸ごとで特養の形をつくることであり、イメージ図には居住系サービスのみで、地域の特養・老健施設が排除されている。これは特養解体を意味すること、また「ユニット型個室」が標準では、誰もが利用できないことから、同協議会では新たな多床室の整備を訴えているが、国はこれに対して介護報酬でペナルティを課しているなど、今回の改定は特養にとって逆風だったと述べた。(ケアマネジメントオンライン)