全国老人福祉施設協議会(全国老施協)の中田清会長は18日、「2012年度トップセミナー」で講演し、国が掲げる地域包括ケアシステムの問題点を正し、施設介護と在宅介護の両サービスの推進を目指すべきとの考えを示した。

 基本的な考え方として「地域包括ケアシステムの基盤強化」を掲げた12年度の介護報酬改定では、施設サービスの報酬が全体的に引き下げ基調となり、特に特別養護老人ホーム(特養)の多床室での引き下げ率が大きかった。

 中田会長は、12年度の改定について、「『施設から在宅へ』という流れだった」と振り返り、「この流れを『施設も在宅も』という流れに変えなければいけない。そのためには、地域包括ケアシステムの問題点を現場から正していくことが必要」と強調。具体的には、定期巡回・随時対応型訪問介護看護を中心的なサービスに位置付けている地域包括ケアシステムには、▽高コスト▽非効率▽提供サービスの質が低い―などの問題点があると指摘した。
 さらに、「特養のケアが、在宅(ケア)と同じようなものでは、『施設から在宅へ』の流れは変わらない。在宅ではできないような専門的なケアをどう構築するかだ」と述べ、認知症の原因疾患別にケアを行うなど「科学的介護」の重要性を強調した。

 このほか、「地域貢献は、社会福祉法人としての使命だ」と指摘し、全ての特養が「社会福祉法人等による利用者負担軽減制度」(社福減免)に取り組む必要があると訴えた。

■多床室報酬減で、「やっていけない」―中村参院議員
 全国老施協常任顧問の中村博彦・自民党参院議員は講演で、今年度の介護報酬改定について、「多床室(の報酬)がどんと引き下げられた。こんなに下がると、事業体としてやっていけない」との見方を示した。その上で、▽第5期介護保険事業計画期間(12-14年度)に、多床室の新設を計画に組み込んでいる地方自治体がある▽多床室であっても、入所者のプライバシーや尊厳を守る工夫が施されている―などを挙げ、その必要性を訴えた。(CBニュース)