3月21日、桜美林大学大学院教授・白澤政和氏によるケアマネジメント研究会主催の報告会「ケアマネジメントの評価としてのQOLを考える」が、東京・四谷の桜美林大学四谷キャンパスで開催された。約90名と満席となった会場では、現職のケアマネジャーらが、研究者と現職者によるケアマネジメントのあり方や質に関する報告に熱心に聞き入る姿が見られた。

報告会はまず白澤氏による、「ケアマネジメントの効果について、要介護度の変化で評価する動きがある。ケアマネジャーは介護保険の枠内で仕事をしているのではないのだから、要介護度で評価するのはいかがなものか。ケアマネジメントはこのような視点で評価するのだということをケアマネジャー自身が議論し、提示していかなくてはならない。今日は、その評価のあり方につながる研究報告をしてもらう」との開会の辞から始まった。

続いて、以下の3つのテーマで報告が行われた。
1)東日本大震災での介護支援専門員と地域包括支援センターの活動結果について(北星学園大学・岡田直人氏)
2)利用者・ケアマネジャーからみた1年間でのQOLの変化・調査報告(東京大学・吉江悟氏)
3)利用者・ケアマネジャーからみた1年間でのQOLの変化・事例研究/認知症QOLの考え方について(前橋市地域包括支援センター西部・山田圭子氏)

この報告会について3回に分けて紹介する。

■沿岸部でも約4割のケアマネジャーが震災当日から利用者の安否確認に
まずは、北星学園大学准教授の岡田直人氏が昨年12月末から今年1月末にかけて行った、東日本大震災後の岩手県と宮城県での介護支援専門員(989事業所)と地域包括支援センター(288カ所。以下、包括と表記)の活動についての調査報告である。

事業所の被災状況や利用者情報の確保方法、安否確認の開始時期、方法、確認する優先順位、確認した動機、ケアプランへの緊急時体制の有無などについて尋ね、その結果は岩手・宮城両県の沿岸部と内陸部に分けて集計・報告された。

利用者の安否確認は、停電等で電話やパソコンが使用不能となる中、内陸部では約76%が、沿岸部でも約40%が震災当日から開始。家族や他のサービス事業者からの情報ではなく、ケアマネジャー自身が直接、安否を確認していたことがわかった。また、安否確認の優先順位については回答者の半数強が日頃から対策を立てており、そのうち、ケアプランに明記していたという回答が沿岸部では約7割、内陸部では約8割を占めていた。

■安否確認は使命感からではなくモニタリングの一環という意識で
安否確認をした動機については、「ケアマネジメントによるモニタリングとして」という回答が内陸部、沿岸部とも半数程度を占めた。これについて岡田氏は、「新潟県中越沖地震の際の調査でも、『何かあればモニタリングとしてすぐ動いている』との回答が多数を占め、使命感で動くことをイメージしていた自分は目から鱗が落ちる思いがした。今回も同様の結果となり、震災など原因に関わらず、利用者に異変が生じる可能性を感じたらすぐに確認に動くことが、ケアマネジャーにとって当然の業務となっていることを改めて感じた」と語った。

■震災後、担当ケース数は居宅介護支援事業所も包括も増加
震災後、居宅のケアマネジャーの担当プラン数、包括の二次予防利用者数はいずれも増加している傾向が見られ、支援体制の強化が必要だと考えられる。

■震災後、緊急時体制のケアプランへの明記は100%に
震災前から緊急時体制をケアプランに組み込んでいたという回答は、「すべてのケース」と「だいたいのケース」を合わせると、約8割に達する。震災後はこの2つの回答の合計が100%に達しており、震災がリスクマネジメントへの取り組みのきっかけとなったことがうかがえた。

以上から岡田氏は、ケアマネジャーは利用者の異変に即応できる意識と体制が整っており、短期間で安否確認ができる仕組みが今回の震災で生かされたこと、緊急時体制については震災後ほぼすべての利用者についてケアプランに明記されたことなどが明らかになったとした。(ケアマネジメントオンライン)