介護報酬との同時改定となった今回の診療報酬改定では、医療と介護の連携の推進も重点課題の一つとなった。新たな要件を満たす在宅療養支援診療所(在支診)や在宅療養支援病院(在支病)の機能を評価し、緊急時の往診や、在宅での看取りを含めた終末期ケアを充実させるほか、医療ニーズの高い在宅患者の増加を踏まえ、訪問看護の訪問回数や対象患者に関する要件を緩和するなど、入院患者が円滑に在宅療養に移行できるよう、医療機関と訪問看護ステーションとの連携も促進する。

■新要件満たす在支診、在支病の報酬増
 常勤医師数や過去の看取り実績など、従来の在支診・在支病の要件に新たな施設基準を追加し、それを満たす場合は報酬を引き上げる。
 具体的には、▽常勤医師3人以上▽過去1年間の緊急の往診実績5件以上▽過去1年間の看取り実績2件以上―の3項目。複数の医療機関との連携で要件を満たしてもよいが、その場合、▽連携する医療機関は10施設未満▽病院は200床未満▽患者の緊急連絡先の一元化▽月1回以上、定期的なカンファレンスの開催による患者情報の共有化―の各要件をそれぞれクリアする必要がある。
 12年度改定では、これらの要件を満たす在支診・在支病を加えることで、評価体系を見直した。例えば、12年度改定で「ターミナルケア加算」と「看取り加算」に再編される「在宅ターミナルケア加算」については、これまで在支診・在支病(10000点)とそれ以外の医療機関(2000点)との報酬の差が大きかったが、新たな在支診・在支病が加わることで、施設に応じた段階的な評価になる。

■早期退院を促進、「退院調整加算」を新設
 有床診療所や病院の退院調整部門を強化し、早期の退院を促すため、入院料に加算を新設する。▽一般病棟、特定機能病院(一般病棟)、専門病院、有床診療所の各入院基本料を算定している患者の早期退院を評価する「退院調整加算1」▽療養病棟、結核病棟、有床診療所療養病床などの入院基本料を算定している医療機関を対象とした「同加算2」―で、点数は「14日以内」から「121日以上」までの7段階=表2参照=。
 同加算はいずれも、入院後7日以内に退院が困難な患者を特定し、在宅療養で必要な事項などを記載する「退院支援計画」の作成に着手するなど、早期の調整が算定要件となっている。計画の作成後、患者への説明や文書の提供のほか、退院後に患者の治療を行う医療機関と情報を共有した場合の取り組みを評価する「地域連携計画加算」(300点)も新設する。

■医療機関と訪問看護ステーションの連携を評価
 入院中の患者が退院後、自宅での療養に円滑に移行できるようにするため、医療機関と訪問看護ステーションの連携に関する評価を新たに加える。
 具体的には、1か月を超える入院期間が見込まれる患者が一時退院した際、患者宅で退院後の療養上の指導を行った場合などに算定できる「退院前訪問指導料」(555点)の評価を引き上げるとともに、退院当日の訪問指導も算定対象とするほか、医療ニーズの高い状態の要介護・要支援者について、退院直後の2週間に限って、特別訪問看護指示による訪問看護の提供を認める。

 また、医療ニーズの高い在宅患者の増加を踏まえ、訪問看護の訪問回数や対象患者に関する要件も緩和。「訪問看護管理療養費」の算定日数制限(月12回まで)の撤廃に加え、「特別管理加算」(重症者管理加算、12年度改定で改称)の要件を見直し、人工肛門を設置した患者などについては、週4日以上の訪問を算定可能とする。
 このほか、現在医療保険の対象外となっている標榜時間外の訪問看護について、介護保険と同様に評価。「訪問看護療養費」と「在宅患者訪問看護・指導料」の中に、「早朝・夜間加算」(午前6時-同8時、午後6時-同10時)と「深夜加算」(午後10時-午前6時)を新設し、それぞれ2100円(同訪問看護・指導料は210点)と4200円(同420点)の報酬を設定する。

■褥瘡、がん認定看護師の訪問看護を評価
 看護補助者との同行による訪問看護を評価する目的で、訪問看護療養費と在宅患者訪問看護・指導料の中に「複数名訪問看護加算」(同療養費3000円、同看護・指導料300点)を創設するほか、医療機関で働く皮膚・排泄ケアやがん関連の認定看護師らと、訪問看護ステーションの看護師による同一日の訪問も評価対象に加える。具体的には、真皮を越える状態の褥瘡患者や、化学療法などを行っているがん患者に対するケアを評価し、同療養費で12850円、同看護・指導料で1285点を算定できるようにする。

■過去の訪問薬剤管理などが要件、「在宅患者調剤加算」を新設
 かかりつけの薬局が在宅患者を訪問できなくても、連携体制を取っている「サポート薬局」が臨時で対応すれば、「在宅患者訪問薬剤管理指導料」の算定が可能となる一方、薬局と患者の家の距離が16キロメートルを超える場合、原則として算定不可とする要件を新たに加える。
 また、過去1年間の訪問薬剤管理指導の実績や、医療・衛生材料の供給体制などの要件を満たした薬局が、同指導料などの算定患者に調剤を行った場合、処方せん受付1回につき15点を算定できる「在宅患者調剤加算」を新設する。

■維持期リハ、要介護・要支援者は次回改定まで
 急性期と回復期は医療保険、維持期は介護保険という役割分担を明確化するため、「脳血管疾患等リハビリテーション料」(脳血管リハ料)と「運動器リハビリテーション料」(運動器リハ料)の点数を、それぞれ1割ほど減額=表3参照=。これらの報酬に関しては現在、発症や手術、急性増悪から脳血管リハ料が180日、運動器リハ料が150日を超えてリハビリを行った場合、月13単位に限って算定できるが、14年3月31日以降、要介護者と要支援者は対象外となる。
 一方、医療保険の疾患別リハビリテーションについては、介護保険に移行後の算定期間を2か月(現行は1か月)に延長し、2か月目は7単位まで算定可能となる。(CBニュース)