社会保障審議会介護保険部会(部会長=山崎泰彦・神奈川県立保健福祉大名誉教授)は30日、今年10月からの議論を取りまとめた報告書「社会保障・税一体改革における介護分野の制度見直しに関するこれまでの議論の整理」を正式に公表した。40-64歳が支払う介護保険料(第2号保険料)に、各医療保険者の総所得に応じて決める「総報酬割」を導入する厚生労働省の提案など、多くの項目で賛否両論を併記している。

 10月から4回開かれた介護保険部会では、社会保障と税の一体改革成案に盛り込まれた改革事項について議論した。報告書で示された方向性を基に、次期通常国会への法案提出や、2012年度予算の編成などが行われる見通し。
 報告書のポイントは次の通り。

■処遇改善交付金、「介護報酬組み入れ多かった」
 年度末で介護職員処遇改善交付金が終了することに伴う12年度以降の処遇改善策については、「交付金では基本給の引き上げにつながらない」「交付金の対象が介護職員に限定されている」などの理由を挙げ、「介護報酬に組み入れるべきとの意見が多かった」とした。介護報酬に組み入れる場合については、「介護事業者に処遇についての情報を公表させるべき」「地方負担や保険料負担の増加にも配慮すべき」などの意見も盛り込んだ。一方で、「(介護報酬に組み入れられれば)労使交渉もままならない状況では処遇改善に結びつくか疑わしい」「介護報酬で対応した場合、介護保険料や利用者負担に影響する」などの理由で、「交付金を維持すべきとの意見があった」ことも明記した。
 このほか、「処遇改善は介護事業者の自主努力により行われるべき」「介護事業者の収支が改善し、処遇改善に回す余力があると判断される」などと、「特段の措置を講ずることは不要ではないかとの意見があった」ことも記載している。


■総報酬割導入、「負担応能性高めるべき」「つじつま合わせ」
 第2号保険料への総報酬割導入をめぐっては、「負担の応能性を高める観点から導入すべき」「相対的に所得の高い都市部の2号被保険者に負担能力に応じた負担を求めることは合理的」といった理由から、「賛成する意見が多く見られた」とした。一方で、「介護職員の処遇改善の財源確保のつじつま合わせにほかならない」「事業主や被保険者の理解が得られない」など「強い反対意見があった」ことも盛り込まれた。

■低所得者の負担軽減、「全般的に肯定意見」
 現在50%となっている公費負担に、追加で公費を投入し、低所得の高齢者の保険料負担を軽減する提案については、「全般的に肯定的な意見だった」とした。

■要支援者の負担上げ、「検討を」「重度化進む」
 要支援者が介護保険サービスを利用した場合の自己負担割合引き上げについては、「給付の内容に応じて、自己負担の割合に差を付けることも検討すべき」などと賛成意見を記した一方、利用が抑制されて重度化が進めば、かえって費用がかかるとの理由から「反対する意見も多かった」とした。 給付が自立支援に資するものか検証する必要があると指摘する意見もあったため、「引き続き制度的な対応に向けて検討を進める」と付け加えた。

■ケアプランの自己負担導入、「質向上に必要」「要望プラン増える」
 ケアプラン作成に対する利用者負担導入をめぐっては、「専門性と質向上の必要性について理解を深めることが必要」と賛成する意見を挙げた一方、「利用者の要望を組むだけのプランが増えるのではないか」などの反対意見も明記。引き続き制度的な対応に向けて検討を進める方針を示した。

■高所得高齢者の利用負担増、「保険料で所得再配分を」「やむを得ない」
 一定以上の所得がある高齢者の自己負担割合引き上げに関しては、「公平性の確保や所得再分配機能の強化は、利用者負担ではなく所得に応じた保険料負担によって行うべき」などの反対意見を示した。一方で、必要なサービスの利用抑制にならないよう配慮した上での引き上げは、「やむを得ない」との意見も多く見られたとした。

■多床室の室料負担、「低所得者多い」「負担均衡を」
 介護保険施設の多床室利用者に室料負担を求める提案については、「低所得者の利用も多いことから、室料の負担を求めるのは避けるべきとの意見が多く見られた」とする一方、ユニット型個室と多床室の負担の均衡を求める意見があったことも明記した。

■補足給付の資産要件導入、「肯定意見多い」
 補足給付への資産要件導入については、▽若い世代に比べて高齢者の保有資産が多い▽社会保障と税の共通番号制度が導入されれば、金融資産の把握も行いやすくなる可能性がある―など、「肯定的な意見が多かった」とした。これに対し、「居住用資産を流動化してフローの負担に充てられない」「資産把握は実務的に困難」といった懸念の声も示している。

■軽度要介護者、「限度額上回る分の負担割合増」の意見も
 要介護1、2の人の施設サービスの給付額が在宅の区分支給限度額を上回っているとの問題提起に対しては、追加負担を懸念する意見を示した一方、施設サービスを重度者向けにする上では、区分支給限度額を上回る部分の負担割合を高めるよう見直すべきとの意見も記した。(CBニュース)