2012年度診療報酬改定の改定率をめぐる動向が大きな注目を集めました。本体部分の引き上げに反対する結果となった政府の行政刷新会議の「提言型政策仕分け」について、小宮山洋子厚生労働相は23日、「重く受け止める」と発言。25日には、薬価を引き下げる一方、診療報酬本体を引き上げて全体として「ゼロ改定」での決着を目指す考えを示唆しました。一方、28日には財政制度等審議会が財政制度分科会を開きましたが、診療報酬の引き上げを容認する意見は出ませんでした。(CBニュース)


■23日(水)行政刷新会議・提言型政策仕分け
 行政刷新会議の提言型政策仕分けで、12年度の診療報酬改定での本体部分引き上げに反対する結果になったことについて、小宮山厚労相は「総理がトップの会議なので、重く受け止め、どのようにしたら必要な所に力を入れられるか検討していきたい」と述べた。
診療報酬引き上げ反対「重く受け止める」-提言型政策仕分けで小宮山厚労相

■24日(木)社会保障審議会医療保険部会
 12年度診療報酬改定の基本方針案を厚労省が提示。医療保険部会と医療部会のこれまでの議論を踏まえた内容で、17日の医療部会に示されたもの。重点課題として、▽病院勤務医など負担の大きな医療従事者の負担軽減▽医療と介護の役割分担の明確化と地域における連携体制の強化の推進および地域生活を支える在宅医療などの充実-の2つを挙げている。委員からは、おおむね賛成の意見が相次いだ。12月1日に開かれる医療保険部会と医療部会に最終案がそれぞれ示される見通し。
診療報酬改定の基本方針案に大筋で合意-社保審・医療保険部会

■24日(木)社会保障審議会介護給付費分科会
 これまで提案してきた各サービスの論点をまとめた「12年度介護報酬改定に関する審議報告案」を厚労省が示した。年度末で介護職員処遇改善交付金が終了するのを踏まえ、12年度以降の処遇改善策については、「介護報酬において対応することが望ましい」と指摘。一方で、これまで提案していた特別養護老人ホームの多床室利用者への室料負担導入は盛り込まれなかった。審議報告は、早ければ12月5日に取りまとめる。
12年度介護報酬改定の審議報告案を提示-厚労省、処遇改善は「介護報酬で対応」

 意見交換では、介護職員の処遇改善の在り方が焦点になった。処遇改善に介護報酬で対応する場合、同省は一定の要件を満たした事業所を評価する「加算」方式にしたい考え。委員からは、賃金支払いに対する公的な介入に反対する声の一方で、処遇改善が確実に行われる必要があるとして、評価する声も上がった。
介護職の処遇改善、「加算」方式に賛否-介護給付費分科会

■25日(金)中央社会保険医療協議会総会
 診療側・支払側の委員がそれぞれ、12年度診療報酬改定に関する意見書を森田朗会長に提出した。診療側が報酬の引き上げによる医療費全体の底上げを求める一方、支払側は、報酬全体の引き上げは「とうてい国民の理解と納得が得られない」と主張している。
【中医協】診療・支払側が報酬改定の意見書

 亜急性期(回復期)の入院医療をめぐって議論し、厚労省側は、一般病棟内にある亜急性期病床と回復期リハビリテーション病棟(回復期リハ病棟)について、患者の状態に合わせて評価体系を統一することを提案。これに対し診療側は、それぞれが果たす役割に違いがあると主張し、慎重な検討を求めた。
【中医協】亜急性期と回復期リハの統一を-厚労省が提案

 医療の提供が困難な地域や離島にある病院など、地域の特性に配慮した診療報酬上の評価について議論。厚労省側は、医療者の確保が難しかったり、病院数が少なかったりといった条件を満たす二次医療圏を指定し、看護配置の要件を緩和するなど、病院内の機能分化に応じた評価体系に見直すよう提案。委員からは、特に反対意見は出なかった。同省は、43医療圏の指定を想定している。
【中医協】地域特性への配慮で医療圏を指定-43圏を想定、厚労省案

 有床診療所の介護療養病床に入院する患者の容体が急変した場合の医療保険での算定(乗り入れ)について、「2病室8床」までの制限撤廃を厚労省が提案した。また、一般病床では「有床診療所入院基本料」、療養病床では「有床診療所療養病床入院基本料」しか算定できない現行の仕組みを見直し、看護職員数などの要件を満たせば、どちらの病床でも患者像に応じて算定できるようにする。
【中医協】医療・介護保険乗り入れ制限緩和-有床診で厚労省提案

 金曜に入院したり、月曜に退院したりした患者の平均在院日数が長い傾向があるなどとして、厚労省が、入退院日の入院医療の評価を論点として示した。しかし、患者や医療提供体制上の必要性などを指摘する診療側に対し、一部の委員は「入院料を半日分にするべきではないか」などと主張。議論は平行線をたどった。同省は、退院日の食事回数0-1回が全体の4分の3を占めるとするデータを示し、退院日に関しては、昼食前までの短時間の入院に対する評価も論点に掲げた。
【中医協】入退院日の医療の評価が論点に

 13対1や15対1入院基本料に、90日を超えて入院する「長期入院患者」を対象に医療区分やADL(日常生活動作)区分を用いた長期療養病棟と同じ報酬体系を導入する案を厚労省が示した。同省はまた、長期療養患者が比較的少ない場合には、「特定除外患者」も平均在院日数の計算に含めることも提案した。
【中医協】一般病棟の一部に医療区分導入も-「13対1」以下の長期入院に対応

■25日(金)小宮山洋子厚労相記者会見
 社会保障改革推進本部終了後に記者会見し、12年度の診療報酬改定で、薬価を引き下げる一方、診療報酬本体を引き上げ、全体として「ゼロ改定」での決着を目指す考えを示唆。同日午前の閣議後の記者会見を受け、小宮山厚労相が本体引き上げ見送りの可能性に言及したと一部報道で伝えられたが、推進本部後の会見では「私の言っている趣旨とは全く違う」と全面否定。「薬価が下がった分、(本体を)上げないと、ネットでプラスマイナスゼロにはならない」などと述べた。
小宮山厚労相、診療報酬全体ゼロ改定を示唆-本体部分は引き上げ方針

■28日(月)財政制度等審議会財政制度分科会
 12年度予算編成に向け社会保障分野の課題を議論したが、診療報酬の引き上げを容認する意見は出なかった。会合後に記者会見した吉川洋会長によると、国内の財政状況が厳しさを増す中での報酬引き上げには、国民の理解が得られないと複数の委員が指摘した。
「診療報酬引き上げ容認意見なし」財政審-分科会、中医協森田会長らからヒアリング