厚生労働省は、11月24日、第41回社会保障審議会介護保険部会を開催した。2012年以降の実施が成案化された社会保障・税一体化改革では、要介護認定者数を2025年時点で現行より3%程度減少させることが課題となっている。今回の部会では、介護保険制度の見直し項目について大きく3つのテーマに分類し検討された。(ケアマネジメントオンライン)

1.費用負担の能力に応じた負担の要素強化と低所得者への配慮
【1号保険料の低所得者 保険料軽減強化】
現行の保険料は、所得段階別に原則として6段階設定となっているが、現行の給付費に対する50%の公費負担に上乗せし、低所得者への配慮として所得以外に資産状況も踏まえ、保険料を軽減する。
・実施にあたっては、国の責任と財源で基準設定をすべき。
・公費負担は国と地方の両者で対応すべき。

【介護納付金の総報酬割導入】
・現在の40~64歳が負担する第2号保険料は、医療保険の加入者数に応じて介護納付金額が決定している。今後、増加する介護費用を公平に負担するため、介護納付金を加入者の報酬に応じた「総報酬割の導入」とする。
・介護給付との結びつきが薄い2号保険者に、多額の保険料を課することは疑問であり、事業主や被保険者の理解が得られない。
・高所得の高齢者の利用者負担を引き上げて、若年者の理解を得る。
・介護報酬の地域区分を見直し、相対的に所得の高い都市部の2号保険者に負担を求めることは合理的。

2.保険給付の重点化
【要支援者に対する給付】
社会保障・税一体化改革では、重度化予防・介護予防として要介護認定者数を2025年に現行ベースより3%程度減少させることが課題となっている。
・利用者負担割合の引き上げのため生活援助とリハビリで差をつける。
・要支援者の給付内容をリハビリ中心に予防強化を図る。
・重度化防止には早期発見を重視すべきで、利用抑制により重度化が進むとかえって費用がかかる。

【ケアマネジメント】
・ケアマネジメントへの利用者負担導入は、利用者のケアプランへの関心が高まりケアマネジャーとのコミュニケーションが促進される。
・利用者負担導入によりケアプランの自己作成が増えればケアマネジャーの専門性がないことを意味し、専門性と質の向上が問われる。
・ケアマネジメントが介護保険利用の入り口であり、利用者の代弁機能も担っているケアマネジャーの資質向上を図るべきで時期尚早。
・ケアマネジメントの機能強化に向けて、制度的な対応が必要。

【一定以上所得者の利用者負担】
・若年層に負担を求める以上、高齢者も一定以上の所得者については、利用者負担割合を引き上げることはやむを得ない。
・介護保険は支給限度額があり、サービスの利用も長期間に渡ることから、利用者負担を上げるべきでない。

【多床室の給付範囲】
・施設の減価償却費相当について全額負担するユニット型個室と、介護報酬で手当てされる多床室との不均衡是正のため、入所者にも一定の室料負担を求めることが必要ではないか
・多床室が低所得者に多く使われているという実態を踏まえて室料負担は避けるべき。

【補足給付における資産等の勘案】
・在宅や居住系サービス利用の場合は自己負担となる居住費について、施設の場合は補足給付により助成をうけ、結果的に保有する居住用資産や預貯金が保全されるのは公平を害す。
・若い人よりも高齢者の方が資産保有は多いことから、資産は積極的に活用すべきで補足給付における資産を加味した仕組みづくりは本格的に着手すべき。

【介護施設の重点化】
・軽度(要介護1・2)の施設利用者が、在宅の支給限度額を上回ることが問題。その差額分については自己負担を求める。
・施設サービスを重度者向けに重点化していく観点から、施設の機能も踏まえつつ居宅サービスを上回る部分について負担割合を高める。


3.介護職員の処遇改善
・処遇改善交付金の維持は望むが、基本的には介護報酬において措置すべき。
・処遇改善を介護報酬で賄うと、保険料や利用者負担に影響が出る。
・介護事業者に処遇について情報公表をさせることを条件にすべき。