全国老人福祉施設大会が8日、高知市内で開幕した。この中で全国老人福祉施設協議会(全国老施協)の中田清会長が講演し、「財政状況が厳しい中、ただ単に報酬をアップしてくれとお願いするのではなく、できることに積極的に取り組むことが大切」と指摘。エビデンスに基づいた「科学的介護」を実践する必要性を訴えた。


 中田会長は、今後、特別養護老人ホーム(特養)が進むべき方向性について、「科学的介護を推進してサービスの質を上げ、評価に堪え得るものにしていくこと」と強調。具体的には、認知症の原因となる疾患別に投薬やケアなどの方法を見直すことや、経管栄養の入所者が再び口から食事できるようになるための口腔ケアを行うことなどを挙げた。また、特養での医療機能を充実させる必要があるとして、介護職員によるたん吸引などに対応できるよう積極的に取り組むべきと強調した。

 さらに、社会福祉法人が低所得者の利用者負担を軽減する「社会福祉法人減免制度」に言及。「やらないと何のための社会福祉法人か問われる」とし、特養総収入の1%程度を減免に充てることを提案した。

 このほか、要介護者を対象に1日複数回の定期巡回訪問と、随時の対応を提供する新サービス「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」(24時間訪問サービス)については、「全国の自治体や関係者から戸惑いの声が上がっている。必要な特養整備を抑制し、これで対応することに問題点がある」と指摘。「要介護度の重い人や病弱な人、単身の人に対応できるのか」「24時間体制で看護職員や介護職員を地域で確保できるのか」などと実効性を疑問視し、「特養待機者がいる中で、施設整備を抑制するのは間違い」と、特養整備の必要性を訴えた。

■中村参院議員、TPP慎重派を批判
 全国老施協常任顧問の中村博彦・自民党参院議員は講演で、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)交渉への参加問題をめぐる日本医師会の対応について、「既得権益を守るために反対している」と批判。参加に慎重な勢力に対し、「部分的な利益を守るために全体の利益を捨てる、『現在最適』と言って『将来最適』を捨てる、ということでいいのか」と疑問を呈した。その上で、「高齢化で日本の内需は期待できないから、(TPPで)アジアを内需にする。これがなくて社会保障費を出せるだろうか」と述べ、TPPへの参加が社会保障費用の捻出につながるとの考えを示した。

 また中村議員は、社会福祉法人について、「雇用を生み、賃金を支払い、国民の生活を守る内需産業として成長させてこそ、生きていける」と強調。その上で、こうした取り組みができない法人については「退出してもらえばいい」と述べた。(CBニュース)