「特養ホームを良くする市民の会」(本間郁子理事長)はこのほど、シンポジウム「施設は人生最期を暮らす場として安心か!~虐待・不祥事から見えてくるサービスの質を問う~」を開いた。参加したパネリストからは、虐待や不祥事の発生には、経営者の資質が深くかかわっているとする意見が続出。パネリストとして参加した本間理事長は、「介護施設の経営者にこそ、国家資格が必要」と訴えた。

 また、橋本武也氏(特別養護老人ホーム同和園園長)は、虐待防止のための工夫を盛り込んだ冊子を発行するなど、自らの施設で実施している対策を紹介。「それでも、『きょう、自分の施設で何かが起こるかもしれない』と、内心ひやひやしている」とし、虐待はどの施設でも起こり得ると強調した。

 本間理事長は、同会で実施した調査結果を報告。利用者を虐待する職員の多くが20-30歳代であることを紹介し、「若い世代の価値観を理解しなければ、虐待防止は難しい」と述べた。また現状の課題として、▽虐待防止に対する自治体間の対応の格差▽現場と乖離した介護保険制度と、それに伴う人手不足▽経営者の能力や意識の格差-などを挙げた上で、「経営者の“質”の差は、(虐待を防ぐ上では)大きな問題」とし、一定の能力と意識を持った人材を確保するため、介護施設の経営者を国家資格とすべきと主張した。

■成年後見人制度が経済的虐待を招く可能性も

 高野範城氏(弁護士)は、認知症や障害者の権利擁護に有効とされる成年後見人制度について、後見人が本人の財産を使い込んでしまう場合もあることから、「よほど注意しないと経済的虐待につながる」と指摘。社会福祉協議会などが後見人を代行する法人後見事業の活用を勧めた。櫛引宣子氏(千葉県健康福祉部高齢者福祉課長)は、内部告発を受けて監査に赴いた際、施設への立ち入りを拒否された例もあったことなどを紹介。その上で、「監査の後、改善がなければ意味がない。自治体は『監査して終わり』ではなく、その施設の状況が改善されるまで寄り添わなければならない」と述べた。(CBニュース)