民主党の厚生労働部門会議に設置された医療・介護ワーキングチームは10月28日、初会合を開き、2012年度の診療・介護報酬の同時改定に向け、党内での本格的な議論を開始しました。診療報酬改定をめぐっては、厚生労働省が26日の中央社会保険医療協議会総会で、診療報酬の算定要件に「屋内禁煙」を組み込むことの検討を提案。また、介護報酬改定関連では、31日の社会保障審議会介護保険部会で、40-64歳が負担する第2号保険料に「総報酬割」を導入した場合の財政や保険料への影響について試算した結果を、同省が示しました。年度末に終了する介護職員処遇改善交付金に代わり、同省は12年度の介護報酬改定で新たな加算をつくる方針を示しており、総報酬割の導入がそのための財源の確保にも絡んできます。 (CBニュース)

■10月26日(水)中医協
 
同省の提案は、がんや脳卒中、COPD(慢性閉塞性肺疾患)など生活習慣病対策の一環として、これらに関連する診療報酬点数の算定要件に「屋内禁煙」を組み込む内容で、委員から反対意見はなかった。厚労省案によると、生活習慣病や小児、呼吸器疾患などの患者が受診する医療機関を中心に屋内禁煙を促す。病院だけでなく、診療所による屋内禁煙も促したい考えで、同省は大半の医療機関が該当するとみている。
【中医協】診療報酬の要件に「屋内禁煙」-厚労省が提案

 がん対策をめぐる議論では、現在、放射線の照射後に医師が毎回診察を行うのが前提となっている外来放射線治療について、患者の全身状態が良好な場合に限り、看護師や放射線技師らのチームが毎回観察して医師に報告すれば、「週1回以上」の診察でも関連の診療報酬の算定を認める案を提示した。
 全身状態が悪かったり、1回に照射する放射線量が多かったりする患者については、現行の毎回診察を維持し、患者の状態を踏まえてどちらかを選択する仕組みにする。
【中医協】外来放射線「毎回診察」緩和へ-病状踏まえた選択制に

 また、がんと診断された段階からの苦痛緩和の取り組みに対し、診療報酬で評価することも検討する。委員から反対意見はなかった。国のがん対策推進協議会の「緩和ケア専門委員会」が8月に取りまとめた報告書では、終末期に限らず、がんと診断された時から緩和ケアを実施すべきと提案していた。
【中医協】がん診断早期の緩和ケアを評価へ-12年度診療報酬改定に向け厚労省提案

 医師や看護師など多職種のスタッフが協力して、糖尿病の外来患者に重点的な医学管理を行った場合、診療報酬で評価する方針を示した。委員から反対意見はなかった。同省によると、糖尿病が強く疑われる人は1997年からの10年間で690万人から890万人に増え、糖尿病を原疾患とする透析患者数も急増。透析治療が必要になると、一人当たり年500万円規模の医療費が掛かるという。
【中医協】糖尿病、多職種の早期指導を評価-厚労省が提案

 同日の総会で報告があった「病院勤務医の負担軽減の状況調査」(速報)によると、病院に勤務する医師の36.6%が、10年度診療報酬改定の後に時間当たりの業務量が「増えた」と感じていることが分かった。同年度の改定では、病院勤務医の負担軽減が重点課題に掲げられたが、「減った」と感じている医師は5.9%にとどまり、「変わらない」が56.2%で最も多かった。
改定後に「業務量増えた」医師が4割近く-中医協・検証部会が調査

■10月27日(木)第12回介護保険推進全国サミット
 
分科会「在宅ケアの革新~定期巡回・臨時対応サービスの展開~」では、介護事業者や自治体関係者、学識経験者、同省の担当者が、来年4月から始まる定期巡回・随時対応型訪問介護看護(24時間訪問サービス)の制度や報酬の在り方について意見交換。導入が検討されている包括払い方式については「(導入が)絶対条件」など、賛成する意見が多かったが、「時期尚早。(12年度の)次の、3年後の改定で導入してはどうか」とする意見もあった。
24時間訪問サービス、報酬方式で賛否- 第12回介護保険推進全国サミットが開催

■10月28日(金)民主党厚生労働部門会議医療・介護ワーキングチーム
 初会合を開き、12年度の診療・介護報酬の同時改定や、社会保障と税の一体改革成案について本格的な議論を開始。初会合では、▽介護職員処遇改善交付金▽後期高齢者医療制度▽高額療養費制度の見直し-の3つのテーマについて同省からヒアリングした。
同時改定へ民主党内の議論本格スタート-医療・介護WTが初会合

■10月31日(月)社会保障審議会介護保険部会

 
同省は、40-64歳が負担する介護保険の第2号保険料を各医療保険者の総所得に応じて決める「総報酬割」を導入した場合の試算を発表。それによると、全国健康保険協会(協会けんぽ)加入者一人当たりの負担は最大で1か月900円減、逆に健保組合は900円増となる。意見交換では、「財源目当てのやり方には断固反対」「現実的な意見が必要。総報酬割は有力な選択肢」などと、委員間で賛否が割れた。
総報酬割で協会けんぽ負担、1人900円減- 厚労省、制度導入後の試算を提示

■10月31日(月)社会保障審議会介護給付費分科会
 
前回に引き続き、12年度介護報酬改定に向けた個別サービスの基準や報酬をめぐり議論。通所介護サービスについて同省は、報酬に設定されている時間区分を見直すことや、月利用者300人以下の小規模型事業所の基本報酬を「適正化」することなどを提案した。通所リハビリテーションについては、一定要件をクリアすれば、月4回以上のサービス提供でも算定できるようにする。
厚労省、通所介護でも時間区分見直しを提案- 小規模事業所の報酬は「適正化」