10月17日に開かれた第82回社会保障審議会介護給付費分科会では、介護報酬において処遇改善措置を実施する場合の考え方について、厚生労働省から新たな提案が示された。

これまでの議論では、現行の交付金という形ではなく、介護報酬に組み込むべきという意見が多数を占めていた。そうした背景から厚労省から、下記のように介護報酬において実施する場合の案が示された。

●算定式
現行(介護職員処遇改善交付金)
 介護報酬総額×交付率=交付金見込み額
 ↓
介護報酬において実施する場合の案
 介護報酬単位×加算率×単価(地域差)=加算額
 ※加算率は、現在の介護職員処遇改善交付金の加算率を引用

●算定要件
現行:交付金見込み額を上回る賃金改善が見込まれた計画を策定
   介護職員処遇改善計画書を作成し、都道府県に提出
 ↓
介護報酬において実施する場合の案
 現行同様の考え方(現在交付金を申請している場合、平成23年度末の賃金額を下回らないように)に加えて、「処遇改善加算(仮)」のうち、本給で支給する割合を一定以上とする

こうした提案に対して、田中滋委員(慶應義塾大学大学院教授)は、「交付金のようにいつなくなるのかわからないものに頼るのはよくない。ただ、地位確立には処遇改善が必要」と、介護職の処遇改善には同意を示した一方で、加算分のうち一定割合以上を本給で支給することを新たな要件として追加したことに対して、「国が労働市場に過剰に介入するのはどうか」、「賃金を上げることには賛成だが、手段に反対」と強調。加えて、報酬として使うのか、職員の教育にあてるのか、職員によってメリハリの支給にするのか…といった選択は、国が決めるのではなく、事業所に任せるべきであることを指摘した。

池田省三委員も、「国家が労働者の賃金に介入するのは慎むべき」と、田中滋委員同様に、手段に対し、異を唱えた。

一方、田部井委員(認知症の人と家族の会副代表理事代理)は、「処遇改善はすべきだが、(介護報酬の枠内ではなく)一般財源ですべき」と主張。「働いている人の処遇の改善も利用者が負担すべきという考えでいいのでしょうか。制度全体、社会全体の問題として考えるべきではないでしょうか。元気で十分に働ける人が応分の負担をして、厚い制度をつくり、介護を受ける側になったら手厚い支援を受けられるようにするべき。介護報酬にのせるというのは、再考してほしい」と訴えた。

久保田政一委員(日本経済団体連合会理事)の代理で出席した藤原氏は、介護職員の処遇改善自体に「介護業界だけが水準が上がるというのは…」と異を唱えた上で、「介護報酬に組み込むのも反対。サービス水準は変わらないで、利用者の負担は上がる」と指摘した。

また、志賀直温委員(千葉県国民健康保険団体連合会理事長)からは、保険料への影響の問題が指摘された。「介護報酬に組み込むということは、保険料にも反映されるということか。給付と負担の関係をどこかで議論していただきたい」という志賀委員の指摘に対し、厚労省担当者は、「現段階では、保険料の引き上げを検討しているということはない」とコメントした。(ケアマネジメントオンライン)