厚生労働省は10月17日、第82回社会保障審議会介護給付費分科会を開催した。
今回から、平成24年度介護報酬改定について、各サービスごとの個別の論点が提示され、議論が交わされた。この日、テーマに挙がったのは、訪問介護、訪問看護、療養通所介護、短期入所生活介護、短期入所療養介護、居宅両用管理指導の6サービス。

このうち、訪問介護の論点として提示されたのは、下記の通り。

【訪問介護の基準・報酬について】
論点1 生活援助の時間区分等の見直しについて
 生活援助の時間区分、単位について、実態に即した見直しを行ってはどうか。
《対応案》
現行:生活援助が中心である場合
   30分以上60分未満
   60分以上

見直し案:45分未満
       45分以上

論点2 自立支援型の訪問介護サービスの推進について
サービス責任者とリハビリテーション専門職との協働による訪問介護計画作成についての評価を創設してはどうか。
《対応案》
サービス提供責任者と作業療法士などの協働による訪問介護計画作成に対する評価を新設
1)サービス提供責任者とPT、OT、STが3月に1回以上、利用者の居宅に同行訪問し、生活機能向上の視点からのアセスメント・モニタリングを協働で行っていること
2)1)の結果をもとにサービス提供責任者が訪問介護計画を作成していること

論点3 サービス提供責任者の2級ヘルパー要件の段階的廃止について
3年以上の実務経験を有する訪問介護員2級課程修了者の任用要件を段階的に廃止してはどうか。
《対応案》
訪問介護員2級課程修了者のサービス提供責任者が1人以上配置されている場合、訪問介護サービスの基本単位を10%減算

論点4 サービス提供責任者の配置基準の見直しについて
サービス提供責任者の主たる業務である訪問介護計画の作成に応じた適切な員数を配置するため、利用者数に応じた配置基準に見直してはどうか。
《対応案》
現行:サービス提供時間 450時間ごとに1人、訪問介護員の数  10人ごとに1人

見直し案:利用者●●人ごとに1人(40人程度)
※利用者数は現状をふまえて40人程度としてはどうか

特に意見が集まったのが、生活援助の時間区分の見直しについて。

馬袋秀男委員(民間介護事業推進委員会代表委員)は、「生活援助はいろいろ組み合わせて行われている。利用者は基本的に60分いてくれると思っているため、『時間が削られた』『短くなった』と思われる。どう説明すべきか? 時間ではなく、行為に対する評価だったと思う」と懸念を示した。

村川浩一委員(日本社会事業大学教授)も、「利用者の多くは1時間程度でやってきた経緯がある。(見直しは)単なる介護報酬の改定ではなく、制度変更。納得される方もいるだろうが、そうでない方もでるだろう」とコメントした。

こうした見直しに対する不安を示す意見に対して、厚生労働省担当者は、「区切りをどこにするかという見直し」、「45分で終わらなければいけないといことではなく、区切っているだけ。45分以上のカテゴリーもある。制約する主旨ではない」と説明した。

このほか、短期入所生活介護に関しては、空所確保と緊急時の受け入れについて提示された下記の論点が議論の的となった。

論点
緊急時の円滑な受け入れを促進させる観点から、短期入所ネットワーク加算は廃止し、以下の通り措置してはどうか。

1)過去3ヶ月間において、短期入所生活介護の専用床について一定割合(5%)の空床を確保していた短期入所生活介護事業所の体制を評価する加算を創設(事業所の全利用者にかかる加算
※一定期間緊急利用者の受け入れがない場合には算定不可

2)1)の加算を算定している事業所について、居宅サービス計画に位置づけられていない緊急の利用者を受け入れた場合の加算を創設(緊急の利用者のみにかかる加算)
※1人1月あたり7日間の支給を限度


これに対して、「在宅での介護を推進するには緊急時に安心して(ショートステイを)使えることが必要。空床を確保することはぜひ進めてほしい」(三上裕司日本医師会常任理事)など、ショートステイが予約で埋まっていて困っていること、空床の確保が必要であることについては同意が得られたが、“加算”という方法に対しては反対意見が多数挙がった。

三上委員も「加算という方法はどうか…」と言葉を濁し、勝田登志子委員(認知症の人と家族の会副代表理事)の代理で出席した田部井氏は、「利用した人が負担するというのなら100歩譲って理解するが、全事業にかかるということは、利益を受けていない人も負担しなければならないということ。それは妥当か?」と強く主張した。

また、「空床がたくさんある地域は加算が取りやすい。空床にしていただけで加算が取れるというのはどうか」という意見も挙がり、厚労省担当者は、「一定の実績がない場合、加算がとれないような仕組みに」と答えた。(ケアマネジメントオンライン)