厚生労働省は10月17日、社会保障審議会介護給付費分科会(分科会長=大森彌・東大名誉教授)に、来年度以降に介護職員を対象とする「処遇改善加算」(仮称)を創設することを提案した。介護職員処遇改善交付金が今年度で終了することを踏まえたもので、確実に介護職員の処遇改善に反映されるよう、「加算のうち本給で支給する割合を一定以上とする」などの新たな算定要件も併せて提案された。

 厚労省によると、「処遇改善加算」の算定方法は、現行の介護職員処遇改善交付金と同じ方法を用いる。加算を受けるには、現行の交付金制度の諸要件を満たす必要がある。さらに、現行の交付金で実現した処遇改善を維持するため、「同じ職員構成で比較した場合、報酬改定前(今年度末)の賃金額を下回らない給与を支給する」「(これまで交付金を申請していなかった事業所では)同じ職員構成で比較した場合、加算後の賃金額は、報酬改定前の賃金額を加算分以上、上回っていること」などの要件も新たに盛り込まれた。なお、現行の介護職員処遇改善交付金は、一般財源から捻出されているのに対し、「処遇改善加算」は、介護保険財源で賄う。

■加算方式や要件に批判続出

 この提案に対し、介護給付費分科会の委員からは「国家が労働市場の賃金に介入するのはおかしい。労使(間の調整)に任せるべき」(池田省三・地域ケア政策ネットワーク研究主幹)、「過度な介入。算定要件の監視と管理にも大変な財源が必要となる」(田中滋・慶大大学院教授)など、加算方式や要件に対する批判が相次いだ。一方、田中雅子委員(日本介護福祉士会名誉会長)は、「(介護の職場で)労組が存在する職場はほとんどない」とし、介護の現場における労使間での賃金交渉の難しさを指摘した。また、田部井康夫参考人(認知症の人と家族の会理事、勝田登志子委員の代理)は、介護保険財源ではなく、現行の交付金と同様、一般財源によって処遇改善を実現すべきと訴えた。(CBニュース)