厚生労働省は、10月13日、第38回社会保障審議会介護保険部会を開催した。
まず、「社会保障・税一体改革成案」について、平成24年度予算概算要求について、そして社会保障・税一体改革における介護分野の対応について、まとめて厚生労働省担当者より説明が行われた後、委員から自由に意見、質問が挙がった。

厚労省担当者は、社会保障・税一体改革成案について説明する上で、「充実と重点化・効率化が裏表の関係」であり、同時に実施すること、消費税を5%から10%にあげてもできることには限界があることなどを強調。

その上で、社会保障・税一体改革における介護分野の検討課題として下記図のようにまとめた。


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この日、最も議論が交わされたのは、介護職員処遇改善交付金について。
介護職員の賃金を月額1.5万分引き上げるための介護職員処遇改善交付金は平成21年10月から平成24年3月までの時限的措置として行われ、全国平均83%の事業所が交付金を申請。その結果、申請事業所では介護職員の給与額が1.5万円増加し、対象外の職種でも1万円前後の増加がみられた(平成22年介護従事者処遇状況調査結果より)と、厚労省担当者は報告。

多くの委員は、この交付金の効果を認め、今後も維持すべきと述べた。
たとえば、田中雅子委員(日本介護福祉士会名誉会長)は、「交付金は一定の効果があったと認識している」と断言した上で、同会が行ったアンケート調査から、「国が公表している1.5万円には程遠いものの賃金が上がった」ことのほか、サービスの質を担保するにあたって重要と強調。

その一方で、久保田政一委員(日本経済団体連合会専務理事)からは、「日本全体の経済が低迷し、賃金が低下しているなかで、介護職員のみ賃金を上げるということは他産業に負担がいくということ。理解が得られないのではないか?」と反対の意見を示した。

また、介護職員の処遇改善に賛成の委員の中でも、その方法については意見が分かれ、伊藤彰久委員(日本労働組合総連合会生活福祉局長)は、「交付金を導入した経緯を振り返ると、介護労働者が逼迫しているという政治的判断だった。介護人材は今後も100万人の増加が求められ、処遇改善は終わった問題ではない」と、交付金として引き続き給付すべきと主張。


それに対し、河原四良委員(UIゼンセン同盟日本介護クラフトユニオン政策顧問)は、「交付金のあり方そのものはおかしいと思っている。国が働く者の賃金に介入するのはおかしい」、「介護報酬に組み入れて然るべき」と主張した。葛原茂樹委員(鈴鹿医療科学大学保健衛生学部医療福祉学科特認教授)も、「介護報酬のなかに組み込んで、基本給を上げるように」とコメント。

さらに、介護職員のみに限定するというあり方も、意見がわかれた点だ。
河原委員は、「私たちの仕事はチームワークで行うもの。(給付の対象となる)看護師、ケアマネジャー、事務職の心情的軋轢が実際に起こっている」と説明。また、全国知事会社会文教常任委員会委員の黒岩祐治委員の代理で出席した小島氏によると、申請のない事業所を一軒一軒まわったところ、介護職員のみで、一緒に働いている他職種は対象でないため、申請できないといった声が聞かれたという。山田和彦委員(全国老人保健施設協会会長)も、「介護職員に限定したあり方は、今日限りで、もっと柔軟に対応できるものにしてほしい」と訴えた。

一方、葛原茂樹委員(鈴鹿医療科学大学保健衛生学部医療福祉学科特認教授)は、「(介護職員が)他職種よりも低いから交付金をつけるという議論だった。にもかかわらず、他よりも飛び抜けて、叩かれているというのは…」と疑問をぶつけた。(ケアマネジメントオンライン)