介護に携わる人の賃金底上げ策として設けた「介護職員処遇改善交付金」が今年度末で期限切れとなる問題で、厚生労働省は13日、来年度以降交付金を継続するのは困難、との見通しを示した。東日本大震災からの復興に巨費を要する中、財源確保が難しいとの理由だ。交付を打ち切る場合は賃金底上げ分を介護保険財政で賄う必要があるが、保険料アップに直結するため決着は年末の予算編成まで持ち越されそうだ。

 交付金は、賃金が低いとされる介護職員の収入を月額1万5000円アップするため、09年度第1次補正予算で創設された。厚労省は13日の社会保障審議会介護保険部会で、来年度以降も続けるには単年度で1900億円かかると指摘したうえで、(1)交付金の設置目的は景気対策だった(2)10兆円超の震災復興費が必要な状況で予算措置は現実的か--などの論点を提示し、事実上、交付金の存続は困難と説明した。

 交付金をやめ、介護保険財政で同額の財源を確保するには、12年度の介護報酬改定で2%強のアップが必要となる。しかし、500億円の国庫負担となるうえ、65歳以上の人の平均月額保険料(4160円)が5000円を超す可能性が高まる。このため、民主党の介護保険制度改革ワーキングチームが昨年12月、交付金の継続を求めた経緯がある。

 同省は総賃金の高い企業からより多くの保険料を集める「総報酬割」の導入や、介護事業者の経営努力の必要性も指摘した。(毎日新聞)