厚生労働省は10月7日、社会保障審議会介護給付費分科会(分科会長=大森彌・東大名誉教授)に、新たな介護報酬の地域区分を導入した場合の財政試算を示した。介護報酬全体の水準を0.6%引き下げることで財源を捻出し、上乗せが必要な地域区分に配分する「財政中立」のスタンスに基づいた試算で、上乗せ割合は、特別区や過半数の特甲地では現行制度より高くなっているが、一部の特甲地や甲地、乙地、その他の区分では低く設定されている。

 現行の地域区分は「特別区」「特甲地」「甲地」「乙地」「その他」の5つに分かれているが、新たな地域区分は国家公務員の地域手当に合わせ、最も高い「特別区」から最も低い「その他」までの7区分が設定されている。なお、現行の地域区分から新区分に変更するに当たり、級地が2区分以上変化し、上乗せ割合も急変する区分に対しては、激変緩和の観点から、現行よりも1区分高いか低い区分に見直す経過措置が講じられる。経過措置は2012年度から14年度までの3年間、適用される。

 厚労省では、新たな地域区分と現行の人件費割合、国家公務員の地域手当の上乗せ割合を基に、新制度を導入した後に必要となる総費用額を算出。現在の総費用額と比較した結果、基本報酬の水準を0.6%引き下げると、新たな地域区分による上乗せ分の財源を捻出できることが分かった。なお、試算で用いられた上乗せ割合から基本報酬の引き下げ分を差し引くと、特別区と過半数の特甲地では現在より上乗せ割合が高くなるが、それ以外の地域では低くなることも明らかになった。


 この試算に対し、村上勝彦委員(全国老人福祉施設協議会総務・組織委員長)は、乙地の上乗せ割合が5%から3%まで下がる点を問題視。上乗せ割合についての激変緩和のための措置が必要と訴えた。また、山田和彦委員(全国老人保健施設協会会長)らは、全体で0.6%の引き下げに疑問を投げ掛けた。(CBニュース)